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未返却魔導書と科学のススメ  作者: 藤本 天
38/85

33P 盤上にそろう役者達の輪唱歌Ⅲ

短いです。

一方、その頃。

セフィールド学術院の魔導科。

そこにある占術学部の『神秘の間』(仮)は『立ち入り禁止』と書かれたロープが張り巡らされ、帯剣した騎士科の生徒が数名、廊下の前で警備を行っている。

物見高い野次馬が集まる中、『神秘の間』(仮)の内部では何人かの人々が意見を交わし合いながらうろついている。

服装も年齢も性別もバラバラな彼らに唯一の共通点があるとするならば魔導師である事だろう。それを示すものは、彼らの身につけられた銀の<クラン>の紋章。

魔導事故が起こった『神秘の間』(仮)の調査と浄化作業のために派遣された魔導師達。

その中にアヴィリス・ツヴァイ=ネルーロウ・スフォルツィアもいた。

『神秘の間』(仮)の床に描かれた焼け焦げた魔導陣に指を這わせ、手元のノートに何やら書き込んだ彼は小さく溜息をついた。

「………はぁ」

彼の美貌には少々ばかり疲れの影が見える。

彼は数時間前までチューリの<クラン>にいた。

今回の事件の事情聴取のためだ。

『また君ですか、アヴィリス・ツヴァイ=ネルーロウ・スフォルツィア』

前回の『迷子の魔導書』事件の時にアヴィリスの事情聴取を引き受けた『断罪人』にまた会い、『断罪人』に呆れたように溜息をつかれた。

(俺だって好きで巻き込まれたわけじゃない……)

と、言い張りたいが、厄介事に首を(強制的に)突っ込まされていると知っている人間(ユーリ)に好奇心丸出しでついて行ったのだから………。

(ほぼ自業自得か……)

いままでの自分の行動を振り返って反省するのみである。

小さく溜息をついたアヴィリスを尻目に、アヴィリスが<クラン>所属の魔導師であると知っている『断罪人』は事件の当事者であるアヴィリスも事件の現場捜査に関わる許可を王宮に申請し、結果として、アヴィリスは捜査に関わる事になったのだ。

「そろそろ、一旦休憩しましょうか?」

『神秘の間』(仮)の事故調査に派遣された魔導師達の長、アヴィリスを事情聴取した上に捜査協力を命じた『断罪人』のヴァイゼ・アルス=ジーニア・ルファルの声により、魔導師達が一斉にほっと息をついて立ち上がった。

暴走した魔導の残滓は魔導慣れした魔導師であっても長らく触れていると辛い。

建物の外に出たアヴィリスはほっと息をつく。

真っ青に透き通った空と爽やかな空気が建物の中、しかも地下の乱れた魔導に曝された体に染みる。

だが。

「?」

ふと、周りを見渡した途端、違和感を覚えた。

(何だ?)

セフィールド学術院内の魔力が多くなっている、……気がする。

魔力は万物に含まれ、生きづく力だ。

魔導を使えない一般人であっても、感情の高ぶりで僅かに魔力を発することがある。

いま、セフィールド学術院は『学研』という催しもののために、活気づいている。

そのせい。とも考えられる、が。

アヴィリスは自前の魔導具をいくつか確認した。

残念ながら、軍門に属していたアヴィリスはこの魔力の高まりをただの自然現象と楽観視出来るほど暢気な性格をしていなかった。

「何かが、起こっているな」

しかしそれが何かはわからない。

けれど。

「まずは、あの部屋を調べるか」

アヴィリスは溜息をつきながら『神秘の間』(仮)に戻った。


アヴィリスさん。『学院』でお仕事中。

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