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未返却魔導書と科学のススメ  作者: 藤本 天
37/85

32P 盤上にそろう役者達の輪唱歌Ⅱ

久しぶりの投稿です。

四か月って!!四か月って!!

近頃忙しくて、すみません。

セフィールド学術院でもっとも巨大な校舎を有するのがユーリの所属する普通科である。

緑の芝生が広がる広い前庭を囲うようにコの字を描くように、また、訪れるものたちを迎え入れるかのように悠然と立つその建物は、魔導科の寮や校舎とは違ってひたすらにシンプルで機能性を重視している。


広く開けられた正面玄関にはどこの学部がどの教室を使っているのかがよくわかる地図が張り出されている中央掲示板があり、そこには学生の呼び出しや休講情報、研究発表の予告状やクラブ活動の勧誘状が貼り付けられていて実に賑々しい。

いまは時期的にも『学研』の研究発表予告がぎっちりと張られていて隙間がないほどだ。


意外なことだが、セフィールド学術院の普通科ではこういう研究発表に力を入れている。

何しろ、様々な分野や思想の学問がひしめき合っている学科である。

自己主張しなければ埋もれてしまう。

実際、埋もれてしまった学部だってある。


なるべく優秀な生徒を釣り上げ、学部を盛り上げ、いつかは科学学部のように独立した校舎を持ちたいと思っているのが各学部を束ねる教授達の気持ちである。


実際、科学学部の喜びを示すかのように、正面玄関の校舎案内地図には下手くそな筆遣いで科学科の校舎が描きこまれている。

普通科の隣、昔は古い多目的倉庫があった場所に科学科の学舎が出来るのだ。

だから、生徒に交じって作業着を着た業者の人間もうろうろしている。

そして、その中にふと、目を引く青い制服を見つけてユーリは足を止める。

「騎士科の生徒?」

この国の王国騎士団の団服を模した青い制服を着た少年がふたり、あたりに目を光らせて歩いている。

「何で?」

騎士科はこのセフィールド学術院の中で唯一本格的な武術を学ぶ学科であり、治安維持訓練の一環のために、『学院』内の見回り、揉め事仲裁、校則違反の取り締まりを行っている。

だから、彼らが学科に関係なくいろいろな場所に出没するのはおかしい事ではないのだが、ユーリの目を引いたのは彼らの腰にぶら下げられた金属の剣。

刃が潰されている摸造刀とはいえ、騎士科の生徒達が帯刀することなど、『学院祭』などの大きな行事でなければ行わない。

(……図書館司書に騎士科の生徒が護衛で付くことになったから?それとも、『学研』が近いから?)

そっと物陰に隠れながら、ユーリはトランクの図書館“紋”を隠し、司書プレートやブレスレットをトランク内にしまう。

 とある司書の発言により、司書達はわざわざ騎士科の生徒達を迎えに行く必要がなくなったため、彼らは皆、騎士科の生徒達に捕まらないように魔導書の回収を行っている。

中には協力体制をとろうとする司書達もいるが、ユーリは『逃げる』側の司書だ。

騎士科の生徒達がなぜ図書館司書の護衛をかって出たのかは分からないが、司書達がもつ装備品の事も魔導書の事もよく知らない人間に関わられても、ぶっちゃけ有難迷惑なのだ。

 いまのところ、騎士科の生徒達が合流したのが派手に魔導師達と戦っているロランの所だけなので、皆上手く逃げ回っていると言える。

(と、いうより、騎士科の介入がわかってから、ロランさんの行動がどんどん派手になっているような………)

懐中時計から通される情報によると、どうやらロランと数人の保安司書達が徒党を組み、強硬派や問題のある魔導師の借りている魔導書の回収を引き受けているらしい。

つまり、彼は率先して騎士科の生徒達の注意を引きつけているのだ。

「いまのうちに魔導書を回収しないと」

同意するようにピルピルと小鳥が啼いた。

「協力してね」

そっと掛けた声に反応してか、小鳥は身体ごとひとつの方角を指し示す。

「こっち、ね」

ユーリは小鳥の先導の下、普通科の学舎に足を踏み入れた。


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