不吉な神託
初めてレーゲンが神から神託を受けたのは、まだ大人の庇護が必要な10歳の頃であった。
レーゲンは辺境の司祭であった養父にその事を打ち明けたが、養父はレーゲンの将来を憂慮し、決して誰にも話してはならないと固く固く口止めした。
この時、神託は一方通行ではないことを知っていたら、養父はレーゲンに私利私欲の為に神託を使うなと諭したであろう。
たが、この国唯一の神の愛し子であるレーゲン以外は、その奇跡が気軽に使えるなんて知りようもなく、誰も夢にも思わなかったのだ。
レーゲンは孤児院で育った。
乳児の頃、両親が事故で他界し、親戚もいなかった為に、乳児院に預けられた。
成長して移籍した孤児院で出会ったのが、当時辺境の教会で司祭をしていた養父であった。
レーゲンは、内向的だが穏和な子供だったが、神託を受けて以来、やや性格が捻くれていった。
養父は誰にも言えない秘密を抱えることがレーゲンにストレスをあたえた為に、捻くれたと考えていたが、すぐにその考えを改めた。
「なぁ、父さん。ふあむふぁたーるって何?」
「……何処でそんな単語を聞いてきたんだい、レーゲン?」
「神託だよ。なんか神様が俺に言うんだ。
いつか俺は運命の女を見つけるんだけど、もしその女を捕まえられなかったら、狂って世界を滅ぼすんだって。」
「なっ!?」
絶句した養父は、レーゲンの性格が捻くれた原因を察したが、それ以上に不吉な神託に頭を抱えた。
つまり、レーゲンに好きな女の子ができて、その子に振られたら、レーゲンが魔王にでもなるということだろうか。
馬鹿馬鹿しいと一蹴するには、神託と言う要素が絡んでいる為に無視できない。
養父は、敬虔なる司祭であり、レーゲンの神託の力を信じていた。
真夜中にこそこそと、レーゲンが淡い光の塊と話している姿を目撃したこともある。
この世界に魔法は存在するが、それはエルフや魔女、人間の理から逸脱し不老不死になった魔法使いにしか使えない。
神はレーゲンに何をさせようとしているのか。
一介の司祭に、その解釈は荷が重い。
だからせめて、女性に嫌われないように、聖職者らしく紳士的な言動を教えこもう、と、養父は決意した。
こうして、面白がり余計なことまで吹き込んでくる神に幼気な少年時代を翻弄されたレーゲンはやさぐれて、粗野で捻くれた性格となったが、養父のお陰で静謐で穏やかな、聖職者に相応しい分厚い面の皮を手に入れた。
よろしければ★を頂けると嬉しいです。
本作は短編「視線の行方」「聖女の瞳は輝く」と登場人物が繋がっているので気が向いたらぜひご覧ください。




