……いや、たぶん違う。
「……その、ごめんね陶夜くん。光里が、余計なことを……」
「あっ、いえ滅相もないです!」
それから、ほどなくして。
鳥の囀りが心地良く響く縁側にて、言葉の通り申し訳なさそうに話す風奈さん。恐らくは、あの件……その、光里さんが僕のことを彼氏と言ったあの件のことだろうけど……いや、むしろ僕の方が申し訳ないくらいで。
さて、その光里さんはと言うと、お姉さんを少し揶揄った(?)後、ご友人と遊びに行くとのことで早々に鳥居を潜って行って……そう言えば、初めてかも、誰かが鳥居潜るところ見たの。
「またね、陶夜くん。遅くまでありがと」
「いえ、風奈さん。こちらこそ、遅くまでありがとうございます。それではまた」
それから、しばらくして。
そう、いつもながらの笑顔で告げる風奈さん。空はもう、すっかり茜色に染まっていて。今日はバイトがないので、いつもよりも長くお邪魔できたわけでして。
その後、いつものごとく鳥居を潜るとそこはいつもの一本道。同じく茜色に染まった空に、同じように時間が流れているのだと改めて実感しつつ歩みを進める。当然と言えば当然なのかもしれないけど、それでもちょっと不思議で――
「――ご無沙汰です、陶夜さん。少し、お時間宜しいですか?」
「…………へっ?」
そんなぼんやりした思考の最中、不意に後方から声が届く。驚き振り返ると、そこには――
「……光里さん」
そう、ポツリと呟く。そこにいたのは、夕陽に映える鮮やかな銀髪を纏う美少女、光里さん。……えっと、偶然……いや、たぶん違う。どうやら、僕に用事があるみたいだし。なので、
「はい、もちろんです」
そう、迷わず答える。用事が何であれ、断る理由は何一つない。今日はバイトもないし。すると、僕の返事に彼女は満足そうに微笑んだ。




