恋人
――――パチン!
『よし、私の勝ち!』
『……ふぅ、やっぱ強いね風奈は』
『ふふん、まあね。なにせ、十年以上ほぼ一人で鍛えに鍛え抜いてきたんだから!』
『……いや、それはちょっと反応に困るけど』
それから、二週間ほど経て。
依月家にて――ビシッと胸を張り告げる私に、言葉の通り少し困惑気味に告げる美少年。何をしているのかと言うと、互いの頬にビンタをかましどちらの方が良い音が出るか――なんて、危険極まるトンデモ遊びではなくメンコ。令和ではほぼ見かけないけど、大正では流行りの遊びの一つで。
さて、目の前の彼は雨崎玲夜――二週間前、私を救ってくれた例の私の恋人で。……まあ、この頃はまだ恋人じゃなかったけども。
ちなみに、旅人だった彼は今、依月家にて一緒に暮らしている。もし、泊まる宛がないならどうかと私が提案したわけで。当初、彼は申し訳ないからと辞退していたけど、むしろ私がそうしてほしいのだと強く訴え最終的にはありがとうと言って承諾してくれた。
『……うーん、たぶんなんだけど……君は、何か特殊な雰囲気を発しているんじゃないかな? どうしてか、皆が怖がるような』
『……特殊な、雰囲気』
それから、数日経たある日のこと。
依月神社の縁側にて、ほのぼのとそんなやり取りを交わす私達。……いや、内容は全く暖かくないけども、それはともあれ――
『……うん、僕もちょっと特殊みたいで、そういうのがちょっと分かったりするから。それもあって、僕は風奈のことが怖くないのかもね。ほら、人は正体の知れないものを怖がるから。例えば、幽霊とか。……まあ、僕もはっきり分かってるわけじゃないから、あんまり説得力ないかもしれないけど』
『……ううん、そんなことない。ありがとう、玲夜』
そう、仄かに微笑み告げる玲夜。うん、それもあるのだろう。彼自身が言った、正体が分かっているから怖くないというのもきっとあるのだろう。……でも、きっとそれだけじゃない。むしろ、主たる理由は彼が――
ともあれ、それから数ヶ月。共に時間を重ねてきた私達は、どちらからともなく想いを伝え――そして、めでたく恋人同士となった。




