今日くらいは良いよね。
「……わぁ、すっごい! ねえねえ陶夜くん、何から乗る?」
「……えっと、そうですね……やはり、まずはウォーミングアップがてらジェットコースターを15回ほど――」
「うん、ウォーミングアップでバテバテだよねそれ?」
それから、およそ一週間後。
そう、軽やかな足取りで尋ねる風奈さん。その後、僕の返答に呆れたように答え……ともあれ、どっちの彼女もやっぱりとても可愛くて。
さて、僕らがいるのは地元のテーマパーク。この地味で陰キャラでコミュ障の僕には似合わないレジャー施設に、なんと今回は僕から誘うという暴挙に出てしまったわけで。だけど……うん、今日くらいは良いよね。だって――
「――それじゃ、行こっか陶夜くん!」
そんな思考の最中、ふと僕の手を取り満開の笑顔で告げる風奈さん。突然のことに少し驚いたものの、そんな彼女に僕も笑顔で答え二人園内を駆けていく。
「……ふぅ、流石にちょっと疲れたね」
「へっ? まだウォーミングアップ序盤ですよ?」
「いや乗らないよ!? ジェットコースターは好きだけど流石に15回は乗らないよ!?」
「………………へっ?」
「本気で驚いてる!? そんな変なこと言った、私!?」
その後、しばらくして。
小さな木組みのベンチで休憩しつつ、ほのぼのとやり取りを交わす僕ら。……いや、ほのぼのではないかな? お疲れのようだし。
ともあれ、ここまでの構成を纏めますと――ジェットコースター3回、急流すべり2回、射撃2回、コーヒーカップ7回という配分で……うん、後は――
「……そうですね、ジェットコースターがご不満でしたら、コーヒーカップを15か――」
「さっきから何なのその回数縛り!!」
その後も、ほどほどに休憩を挟みつつ様々なアトラクションを巡った僕ら。そして――
「――いやー、やっぱり最後はこれだよね。うわ、すっごい良い景色!」
「……いや、まだほとんど上がって……いや、まあいっか」
そう、目を輝かせ外を見つめる風奈さん。まあ、まだほとんど上がってないんだけど……でも、本人が楽しんでるんだし敢えてツッコむのも野暮だよね。
「……そう言えば、改めてだけどありがとね、陶夜くん。今日は……いや、まだ終わってないけど……今日は本当に楽しかった! だから、誘ってくれてほんとにありがと、陶夜くん!」
「……風奈さん。いえ、お礼をいうのはこちらの方です。僕の我が儘に付き合ってくださり、本当にありがとうございます、風奈さん」
その後ほどなく、ニコッと笑いお礼を言ってくれる風奈さん。この様子だと、本当に楽しんでくれていたようでホッと安堵を覚える。ただ、それにしても……お礼を言うのは僕の方なのに、ほんとに優しい人だ。
そして、徐々にゴンドラは上がっていく。僕と交互に見つつ、見晴らしの良くなっていく景色にその目もいっそう輝いて――
……うん、本当に申し訳ない。ないけれど……そろそろ、言わなきゃね。このゴンドラが、地上に降りるその時までに。
「――依月、風奈さん。貴女は、およそ100年前――大正時代から、今この令和にやって来たのですね」
そう、真っ直ぐに見つめ告げる。しばし、沈黙が空間を支配する。つい先ほどまで、彼女の明るい声が響いていたのが嘘みたいに。そして――
「…………そっか」
そう、ポツリと呟く風奈さん。何処か悟ったような、淡い微笑を浮かべながら。そして――
「……それじゃ、もう知ってるんだよね? 私が、大正でどんな罪を犯したのかも」
「…………」
そんな彼女の言葉に、口を一文字に結ぶ僕。実のところ、事の経緯まで詳細に知っているわけじゃない。だけど……だからこそ、ここで否定することに意味はない。貴女は、罪なんて犯していない――なんて安直に否定することなど何の意味もない。彼女自身が、否定を求めていないのだから。
すると、何処か満足そうに微笑む風奈さん。そして、少し居住まいを正し、僕を真っ直ぐに見ながら再び口を開いた。
「……私の、せいなの。玲夜を……真っ直ぐで優しいあの人を、誰より大切なあの恋人を……私が、殺したの」




