流石に、もう――
「……ほんと、ごめんね陶夜くん。疲れたでしょ、光里の相手」
「あっ、いえそんなことは! すっごく楽しくて、時間を忘れてしまうほどでしたし!」
「……うん、そう言われるとそれはそれで複雑なんだけど……やっぱり、幼女愛者?」
「あの、せめてロリコンと言ってく……いや、違いますけども」
それから、数十分後。
そう、胡乱げに尋ねる風奈さん。いや、だからロリコンではなく……あと、前にも思いましたが光里さんって幼女なの?
ちなみに、今この場――縁側に光里さんはいなくて。明日も学校なので、私はもう寝ますとつい先ほどお部屋の方へ……でも、去り際にそっと僕にウインクしていった辺りきっとそういうことなんだろうなと。……うん、なんだか申し訳ない。
「――それでさ、聞いてよ陶夜くん。折角沖縄に来たっていうのに、肝心のスカイダイビングが予定になくてびっくりしちゃった。あーあ、楽しみにしてたのに」
「ああ、確かに沖縄であればスカイダイビングは是非とも……ん? スキューバダイビングではなく?」
「ああ、スキューバダイビングはあったよ。まあ、私は辞退したけど。海って、ちょっと苦手だし」
「……左様でございますか」
ともあれ、皓々と輝く月の下にてほのぼのと会話を交わす僕ら。いや、むしろスカイダイビングが予定にあったら僕としてはそっちの方がびっくりなんですけど。
……でも、海が苦手というのはちょっと分かるかも。まあ、理由まで同じかは分からないけど……ともあれ、ずれた感想かもしれないけど、こんなちょっとした共通点でも嬉しく――
「……ねえ、陶夜くん。その……やっぱり聴こえてた? 玲夜のこと」
「…………へっ?」
すると、不意に届いた風奈さんの言葉。……えっと、玲夜……うん、それは――
「……あの時、寝言で仰っていた……」
「……うん、やっぱり聴こえてたんだね。なんか……ごめんね?」
「……あ、いえ……」
そう答えると、淡く微笑み謝意を口にする風奈さん。きっと、僕の存じないどなたかのお名前なのだろう。ただ、それはともあれ当然のこと謝る必要なんてどこにもない。むしろ、意図した結果でないとは言え許可もなくプライベートを覗き見た感じでこちらが申し訳――
「……それでさ、どう思った?」
「……へっ?」
すると、またもや不意に届いた思わぬ問い。……どう思った、とはいったい――
……いや、止めよう。ここまできて、とぼけても仕方がない。流石に、もう分かってるから……彼女の気持ちも、僕の気持ちも。だから――
「……あの、風奈さん。僕は――」
「――待って!!」
「…………へっ?」
返答しようとするも、僕の言葉に被せる形でそう言い放つ風奈さん。……えっと、急にどうし――
「――――っ!!」
刹那、呼吸が止まる。突如、彼女が胸を抑え苦しそうに呼吸を――
「――――風奈さん!!」




