なにゆえ?
「……いやー、やっぱりここは落ち着くなぁ。あっ、これお土産ね陶夜くん」
「……へっ? あ、ありがとうございます風奈さん」
その後、さっと縁側に座りそう口にする風奈さん。どうしてか、光里さんと僕の狭い間に割って入る形で……うん、どして?
ともあれ、彼女の手からお土産を受け取る。緑を基調とした、色彩豊かな長方形の箱を。うん、間違いなくご当地もの……それも、僕も良く知る有名なご当地のお土産で――
「……あの、ところで風奈さん。やはり、僕の目がおかしいのか……その、僕の視界に生八ツ橋との文字が鮮明に映っていて……」
「うん、なんか沖縄で京都フェアやってたから買ってきちゃった!」
「敢えての!?」
そう、Vサインと共に何とも清々しい笑顔で言い放つ風奈さん。いや敢えての!? 沖縄まで来て、敢えて自分の町のお土産を……いや、良いんだけどね。生八ツ橋好きだし、何より風奈さんからのお土産だし。
「……そう言えば、今更ですが……全然、驚いてませんよね風奈さん。僕が、今ここにいることに」
ともあれ、頂いた生八ツ橋をみんなで食べつつ尋ねてみる。うん、やっぱり美味しい。そして、普段よりいっそう美味しく感じるのはきっと気のせいではないのだろう。
「……ああ、それは光里から聞いたからだよ。今、陶夜くんが依月家に来てるって」
「……ああ、なるほど。それで、その方法とは?」
すると、やんわり微笑み答える風奈さん。なるほど、それなら納得……と言うか、よくよく考えればそれしかないよね。
ただ、その方法は少し気になる。やはり、巫女さんと神様だけに遠くにいてもテレパシーとかで――
「えっ、もちろんラインだよ?」
「なんで普通に文明の利器を活用してんですか!!」
「なんで怒られてるの私!?」
すると、僕の発言に目を見開く風奈さん。……まあ、そうなるよね。そもそも、送ったのは光里さんなのだから怒るなら彼女に……いや、それもおかしいけども。
「……全く、陶夜くんがとんでもないこと言うから、折角の旅行の思い出が全部ふっとんじゃったよ」
「……いや、それは僕のせいではないかと」
その後、やれやれといった表情でそんなことを言う風奈さん。いや、それは僕のせいではないかと。そもそも退屈だったんですよね? 旅行。
「……そう言えば、光里。前々から言おうと思ってたけど……あれって、貴女の仕業だよね? 全く……私はまだしも、陶夜くんに迷惑掛けないでよね」
すると、ジトッと光里さんを見ながらそう問い掛ける風奈さん。……えっと、何のことだろう。これと言って、なにか迷惑を掛けられた覚えは――
「――まあ、やはり神様の使いと言えばキツネですし」
「そんなことは聞いてないんだけど!?」
そんな疑問の最中、風奈さんの問いに何故か胸を張り答える光里さん。……いや、貴女の仕業だったの? あのキツネ。……うん、なにゆえ?




