戸惑い
「全く、デレデレしちゃって情けない。いくら私とそっくりでびっくりするほど綺麗だからって、中身まで私みたいに綺麗だとは限らないんだよ? 全く、警戒心が足りないよ陶夜くんは」
「……えっと、その……すみません……?」
それから、数十分後。
すっかり暗くなった帰り道を、ほのぼのと会話を交わし歩いて行……いや、ほのぼのしてないか。今もジトッと不服そうな目を向けられてるし。ただ、デレデレしてたつもりはないのだけど……そう見えたのかな?
……ところで、今更ながら自分で言っちゃうのすごいね。まあ、否定する気は毛頭ないんだけども。
……まあ、それはそれとして――
「……ところで、風奈さん。あの時、いつの間にかいなくなっていましたけど、どうして――」
「あっ、あれね! えっと……そう、急に盲腸になって病院に――」
「ええっ!?」
「あっ、でも大丈夫! もう治ったから!」
「はやっ!! ……いえ、それなら良かったですけど」
いや早っや!! 盲腸ってそんなすぐ治るの!? いや、もちろんすぐ治るに越したことはないんだけど。うん、それなら良かっ――
「――っ!! 風奈さん!!」
「…………ふぅ」
そっと、息を零す。と言うのも――今、猛スピードでキツネが風奈さんへと直進し……キツネ? いや、なんでこんなところに――
「……あの、陶夜くん、その……」
「……へっ? あっ、すみませんその――」
「あっ、ううん! その、ありがと……」
すると、ふと届いた声に慌てる僕。と言うのも、風奈さんを庇う際……その、彼女を抱き締める形になってしまい――
「……そ、その、ごめん! 私、ちょっと用事を思い出した! だから……その、ありがと!」
「……へっ? ……あ、はい……」
すると、パッと僕から離れ駆け足で去っていく風奈さん。……うん、そりゃ嫌だよね。その、僕なんかに……ごめんなさい、風奈さん。




