まだまだ未熟な身でして
「……わぁ、すっごい美味しいよ陶夜くん!」
「……ええ、ほんとに。料理オンチの姉さんとはまさしく雲泥の……いえ、そもそも比較すること自体が申し訳ないですね」
「うん、後で神社裏に来ようか光里」
「……あはは、ありがとうございますお二人とも」
それから、一時間ほど経て。
縁側にて、お二人の言葉に苦笑いを浮かべるつつ答える僕。いや、もちろん褒めていただいたことは大変嬉しいのだけども。……ところで、ここの神社裏ってどこなんだろ。
まあ、それはともあれ……こうして縁側で食事をするのは初めてだけど、これが大変オツなもので。皓々と月の輝く澄んだ空の下、こうして三人同じ釜の飯を……あれ、意味違うかな?
さて、ざっくりと経緯をお話しすると――あの後、何はさておき食事にしようという話になり、私に任せなさいと腕まくりする風奈さんにそれでは是非とお願いするものの……その、少し見ていられない状態でして。
それで、僭越ながら僕が立候補し、お手並みのほどは分からないけどまあ姉さんよりはマシだろうと判断した光里さんも賛同。当初、風奈さんは少し不服そうにしてたけど、泊めていただくせめてものお礼として僕にお任せいただけないかと懇願したところ、まあそういことならと最終的には承諾していただけた次第で。
尤も、やる気に溢れていた風奈さんには申し訳ないけど……でも、僕としてもお世話になるだけじゃ申し訳ないので、少しでもお役に立てたなら幸いです。
「……それにしても、ほんと上手いよね陶夜くん。どこかジャングルの秘境で修行してたとか?」
「……いや、僕には料理とジャングルの秘境が真っ先には結びつかないのですが……ですが、ありがとうございます風奈さん。それと、そうですね……昔から、よく家で料理をしていたのでそれが役に立ったのかなと」
「……へぇ、偉いね陶夜くん。よしよし」
「……あ、あの風奈さん……ちょっと、恥ずかしい」
「バカップルですね」
すると、悪戯っぽく微笑み僕の頭をよしよしと撫でる風奈さん。……いや、流石にちょっと恥ずかしい。それと……今、バカップルと言いました? 光里さん。
「まあ、それはともあれ良かったですね姉さん。未来の旦那さまが料理上手な人で」
「……へっ? ちょ、ちょっとなに言ってんの光里! その、ごめんね陶夜くん、光里が馬鹿なことを……」
その後、ほどなく届いた光里さんの言葉に慌てた様子の風奈さん。一方、僕は慌てるどころか声すらも出なくて。
……もちろん、分かっている。僕なんかが、風奈さんの……いや、そもそも誰の旦那さまにもなれるわけないことくらい。それに、料理の件にしたって――
「……その、ミシュランの星を一つも獲得していない僕が旦那さまなど烏滸がま――」
「結婚ってそんなにハードル高いの!?」




