初デート?
「ふふっ、初めてのデートだね? 陶夜くん」
「……へっ? あっ、いえ僕なんかがデートなどしては世の中のデーター方々に申し訳ありません!」
「うん、なに言ってるの?」
それから、二週間ほど経て。
放課後、帰り道を歩きながら馬鹿みたいな応酬を交わす僕ら。……いや、馬鹿なのは僕だけなんだけども。あと、データーってなに?
あと、ついでに言うと帰り道でもなく。と言うのも、僕らが今向かっているのは依月家ではなく、我ら日本が誇るあのレジャー施設である空オーケス……はいごめんなさいカラオケです。
――ともあれ、およそ15分後。
「……わぁ、これがあのカラオケ……あの、仲睦まじい男女が密室にて愛を確かめ合う――」
「それどこの知識!?」
部屋に入るやいなや、室内を眺めつつそんなことを言う風奈さん。いやどこの知識!? ……いや、まあ僕もよく知らないけど。
……ただ、それはともあれ――
「…………ふふっ」
「……なんか、馬鹿にしてない? 陶夜くん」
「……へっ? あっ、いえ滅相もありません!」
思わず声を洩らすと、少し不服そうな目で尋ねる風奈さん。……いえ、馬鹿にはしていませんよ? ただ、楽しそうに室内を眺める貴女の姿がなんとも愛らしいなと思っただけでして。
「ところで、さっきも聞いたけど陶夜くんは時々来るんだっけ、カラオケ」
「はい、そうですね。まあ、本当に時々ですけど」
「ふーん……誰と愛を確かめに?」
「いや違いますよ!? ……その、一人で……」
「……そっか、ごめんね」
「いや憐れまないで!!」
それからほどなく、ソファーに腰掛け他愛もないやり取りを交わす僕ら。いやどんだけ信じてるんですかその情報。あと、本気で憐れむのは控えていただけると。
ともあれ、楽しそうな笑顔で曲を送信する風奈さん。ちなみに、初めてゆえこれは何だろうと興味深そうにデンモクをあれこれ動かし見つめていた様子もたいへん愛らしく……いえ、馬鹿にしてないですよ?
その後、イントロの始まりとほぼ同時に立ち上がる風奈さん。そして、僕の方へビシッと指を差し――
「――さあ、私の歌声にとくと聴き蕩れるがいいよ陶夜くん!」




