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key〜光の先へ〜  作者: 初 未来
第5章 科学技術の王国

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第5章 (13)足りない覚悟

 エライザは、リズの言葉を理解できずにいた。


(私の力…?このハンドガンは、ただ魔法を撃ち出す道具じゃない…?)


 彼女の瞳は、混乱と戸惑いに揺れている。そんなエライザの様子を、リズは冷たい視線で見つめていた。リズは、無言でハンドガンをさやに戻すと、エライザの目の前まで歩み寄る。その一歩一歩が、エライザの心を追い詰めていく。リズは、エライザのハンドガンに、そっと触れた。


「このハンドガンは、ただ弾を撃ち出すだけの道具ではありませんわ。」


 リズは、静かに、しかし確信に満ちた声で語り始めた。


「これは、あなたたちの中に眠る魔力を、増幅させるための装置です。この銃を手にすることで、あなたのうちに秘めた力が引き出される。私のしていたことは、神経回路に魔力を作用させて、感覚を研ぎ澄ませる程度のものに過ぎない。しかし、魔力が潤沢なアイシアで、あなたのような潜在能力の高い者がこのハンドガンを使えば、その力は想像を絶するものになる。」


 リズの言葉は、まるで魔法のようにエライザの心に響く。彼女は、自分の故郷で感じていた、精霊の声や、森の息吹。それが、自分自身の力だったのかと、初めて知った。


「あなたには、まだその自覚がない。だから、あなたは、この銃を、ただの道具としてしか扱えない。あなたの力は、あなた自身が想像するよりも、遥かに巨大なものなのですわ。」


 リズはそう言って、エライザから一歩下がった。そして、静かに、しかし鋭い眼差しで、二人に向けた。


「あなたたち、弱すぎます。身体も、心も、全てが脆すぎる。あなたたちが、強大な『力』を求めている者たちと対峙するのならば、今のままでは、生きて帰ることはできないでしょう。あなたたちの覚悟は、まだ、ただの子供のお遊びでしかありません。」


 リズの言葉は、二人の心を容赦なく打ち砕く。しかし、それは、彼女たちの心を折るための言葉ではなかった。それは、二人がこれから立ち向かう、絶望的な現実を突きつけるための、厳しい試練だった。


 エライザは、リズの言葉に、何も反論することができなかった。彼女の心の中に、今まで感じたことのない、強い怒りと、そして、悲しみがこみ上げてくる。それは、自分自身の無力さに対する、どうしようもない感情だった。


(私は…弱い…?バッシュを守るどころか、私は何もできない…)


 エライザは、震える手でハンドガンを握りしめた。その金属の冷たさが、彼女の心をさらに冷たくしていく。しかし、その時、彼女の心の中に、一つの光が灯った。


(それでも…私は、強くならなきゃいけない…!)


 それは、彼女が、バッシュを守るために決意した、あの日の想いだった。その想いは、リズの言葉によって、より確固たるものへと変わっていく。


 エライザは、顔を上げ、リズを真っ直ぐに見つめた。その瞳には、もう迷いはなかった。彼女の心の中には、恐怖や絶望ではなく、ただ、強くなりたいという、強い決意の光が宿っていた。


 リズは、ハンドガンを地面に置いたまま、冷たい声で言い放った。


「実戦はまだまだ無理ですわ。ハンドガンなしでも、わたくしはあなたたちよりも数段強い。その程度の覚悟と力では、この先死ぬだけですわ。」


 その言葉は、二人の心を再び打ち砕いた。リズは、それ以上何も語らず、ただ無言でハンドガンを回収すると、訓練場の隅に積み重ねていた標的の残骸を指差した。


「もたもたしないで、片付けなさい。次はお仕事よ。わたくしの研究に付き合ってもらいますわ。」


 テキパキと、無駄のない動きで指示を出すリズに、エライザとアリサは慌てて動き出した。床に散らばった魔力弾の破片を拾い集め、標的の残骸を積み重ねていく。二人の心の中は、リズの言葉でいっぱいだった。


「…ひどいよ、リズさん…」


 アリサが、小さく呟いた。その声には、悔しさとは違う、やり場のない悲しみがにじんでいる。彼女は、自分たちの無力さを痛感していた。


「でも…本当のことだわ…」


 エライザが、静かに答える。彼女の心にも、アリサと同じように、どうしようもない無力感が渦巻いていた。しかし、それ以上に、リズの言葉が持つ「真実」が、深く心に突き刺さっていた。


「ぼく、今まで自分が、そこそこ剣術も魔術も使えて何でもできると思ってたんだ…でも、全然違った…」


 アリサは、うつむきながらそう言った。彼女の瞳には、絶望の色が浮かんでいる。


「私も…故郷では、巫女として、みんなを支えなきゃって、思っていたのに…何の役にも立たない…」


 エライザは、アリサの言葉に、静かに頷く。彼女たちは、それぞれの場所で、それなりに「特別な存在」として生きてきた。しかし、このローレル王国で、そしてリズの前に立って、自分たちがどれだけ無力で、弱い存在であるかを思い知らされたのだ。


「でも…」


 アリサが顔を上げた。その瞳には、まだかすかに光が残っている。


「でも、ぼくたちには、強くなりたいっていう気持ちがある!リズさんは、それを試しているんだと思うんだ。ぼくたちが、どれだけ本気なのかを…」


 アリサの言葉に、エライザは、はっとしたように彼女の顔を見つめた。そうだ、リズは、ただ二人を罵っているわけではない。彼女は、二人の「覚悟」を試しているのだ。


「…そう、だわ…」


 エライザは、そう呟くと、再びハンドガンの訓練をしていた時のことを思い出した。リズは、ただ厳しいだけではなかった。彼女の言葉には、常に「強くなれる」という希望が込められていた。


「よし!ぼく、頑張るよ!リズさんに認めてもらえるくらい、強くなるんだ!」


 アリサは、そう言って、拳を強く握りしめた。


「私も…バッシュを守るために…」


 エライザもまた、心の中で、新たな決意を固める。


 二人が、お互いの目を見て、未来への希望を語り合っていた、その時だった。


「まだ終わらないのですか!早くしなさい!わたくしの研究時間が無駄になりますわ!」


 リズの声が、冷たい雷鳴のように、訓練場に響き渡った。二人は、慌てて残りの片付けを再開した。


「う、うん!今、終わるよ!」


 アリサが、大きな声で返事をした。リズは、その返事に、少しだけ口元を緩めたようだった。しかし、その表情は一瞬で消え、再び冷たい、研究者の顔に戻っていた。


 エライザは、そんなリズの様子を、ちらりと見た。彼女は、リズという女性の、不器用な優しさと、そしてこの国を守ろうとする強い意志を感じ取っていた。


(リズさん…ありがとう…)


 エライザは、心の中で、リズに感謝を伝えた。彼女たちの旅は、今、新たな師を得て、本当の始まりを迎えようとしていた。

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