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key〜光の先へ〜  作者: 初 未来
第5章 科学技術の王国

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第5章 (8)リズの提案

 食事が終わり、静かな時間が流れる食堂で、リズは片付けを終えると、再び彼らの前の席に座った。彼女の視線は、スコールとバッシュを交互に見つめている。


「……で、あなたたちはここに何しに来たんですか?」


 リズは、一切の無駄を省いた、直球の質問を投げかけた。その言葉には、ごまかしは一切通用しないという、強い意志が感じられた。


 バッシュは、リズの言葉に、どう答えるべきか迷った。彼の目的は、過去を探すこと。そして、エライザを狙う「力」を止めることだ。しかし、それをこの国の人間に、ましてや出会ったばかりのリズに話しても良いのだろうか。


「私たちは…ただ、旅をしているだけで…」


 アリサが、ごまかそうと曖昧あいまいに答えた。しかし、リズは、その言葉を軽く受け流した。


「そんな嘘、通じませんわ。スコールは、興味のない相手をわざわざ研究所に連れてきたりしない。それに…」


 リズは、静かに、しかし冷たい声で続けた。


「私たちは、あなたたちの目的を知る必要がある。ローレル王国に持ち込まれる問題は、全て私たちが解決しなければならないから。」


 その言葉には、ローレル王国という国を守る、彼女の強い使命感が感じられた。バッシュは、リズの真剣な瞳を見て、隠し立てするのは無意味だと悟った。彼は、エライザの故郷が滅びたこと、そしてその原因が、ローレル王国が『力』を求めていることが原因の可能性があること、ありのままに語った。そして、その手がかりを求めて、ローレル王国へと旅をしてきたことを話した。


「私たちは、この『力』が、なぜ必要なのか知りたい。そして、二度と悲劇が繰り返されないように、この『力』を止める方法を探しています。」


 バッシュの言葉に、リズは静かに耳を傾けていた。彼女の表情は、怒りから、真剣な、そして悲しげなものへと変わっていた。


「……そうですか。あなたたちが、『力』を求めているわけではない…」


 リズは、そうつぶやくと、スコールの方を見た。スコールは、ただ黙って、バッシュたちの話を聞いていた。彼の瞳は、真剣な光を宿している。


 リズは、再びバッシュたちに向き直ると、静かに、しかし強い声で言った。


「わかりました。あなたたちの目的はわかりましたわ。では、明日から、私たちと一緒に働きましょう。」


 その言葉に、バッシュたちは驚きを隠せない。


「働く…?」


 リズは、バッシュの言葉に頷いた。


「ええ。あなたたちが探している『力』の正体、そしてその危険性…それを知るには、私たちの研究に触れるのが一番早い。その探している『力』が何かは知らないけれど、科学の力がどんなものか知るためにね。そして、私たちの研究に触れるには、私たちの手伝いをするのが、最も効率的ですわ。」


 リズは、そう言って、挑戦的な笑みを浮かべた。その瞳は、バッシュたちの決意を試すかのように、静かに輝いていた。

 リズの言葉に、スコールは驚きを隠せない。


「マジか?リズ、ほんとに働かせるのか?」


 スコールは、冗談めかしていた表情を消し、真顔でリズに問いかけた。しかし、リズはスコールの言葉を意に介さず、冷たい声で答える。


「マジです。この研究所は、遊び場ではありませんから。」


 リズの真剣な眼差しに、スコールはたじろいだ。バッシュ、アリサ、エライザは、そんな二人のやり取りに困惑するばかりだ。


 しかし、バッシュは、リズの提案を冷静に考えていた。彼が探している『力』の正体を知るには、ローレル王国の技術に触れるのが最も早い。そして、その技術の最先端にあるのが、スコールとリズの研究所なのだ。


「…それが答えに繋がるのなら、俺たちは承知する。」


 バッシュは、そう言って、静かに頷いた。その言葉に、アリサとエライザも、迷いを捨てたように頷いた。


「マジか…」


 スコールは、バッシュの言葉に、呆然とした表情でつぶやいた。彼の言葉は、彼らが本気で『力』の正体を探し、悲劇を止めようとしていることを示していた。


「ああ。」


 バッシュは、スコールの視線を受け止め、力強く頷いた。


 リズは、そんなバッシュたちの決意に、わずかに口元を緩めた。彼女の瞳には、冷たい警戒心ではなく、彼らに対する、かすかな期待の光が宿っているように見えた。


「わかりました。それでは、明日から早速、研究の手伝いをしてもらいます。ご期待に沿えるよう、わたくしたちの研究の全てを、あなたたちに開示いたしますわ。」


 リズは、そう言って、挑戦的な笑みを浮かべた。その笑顔は、これまでの冷たい表情とは違う、科学者としての自信と、そして彼らへの信頼が入り混じったものだった。


 バッシュたちの旅は、今、新たな局面を迎えた。それは、単なる休息ではない、ローレル王国の秘密に迫るための、過酷な「労働」の始まりだった。


 夕食と今後のことについての話し合いを終え、バッシュたちは再び客間へと戻った。部屋の扉が静かに閉まると、三人だけの空間に、安堵の息が漏れた。


 アリサは、ベッドに腰掛けると、疲れたように天井を見上げた。


「疲れた…こんなに頭を使ったのは久しぶりだよ。それにしても、本当に驚きの連続だったね。この街も、食事も、そしてスコールさんとリズさんの関係も…」


「そうだね…」


 エライザが、静かに頷いた。彼女は、窓から見える、偽物の街並みをじっと見つめている。


「でも…私は、少し安心した。ここに、精霊がいない理由がわかったから…」


 エライザの言葉に、バッシュは静かに耳を傾けた。


「精霊がいないのは悲しいけど、この国が、自然を犠牲にしてきた結果だとわかったから、なんだか納得できた気がするの。それに、スコールさんたちが、それを分かっているから…」


「…そうだね。彼らは、自分たちが何をしているか、よく理解しているようだ。」


 バッシュは、エライザの言葉に頷いた。この国の完璧な技術の裏には、自然という大きな代償があった。しかし、スコールとリズは、その事実から目を背けていない。それが、彼らが信じられる理由の一つだった。


 アリサは、そんな二人の様子を見て、ふと真面目な顔になった。


「…でも、本当に明日から、働くんだよね。一体、何をさせられるんだろう?ぼくは、魔術少しと剣技少し、あとはリュートしか使えないし…」


「俺もだ。剣の腕しかない。」


 バッシュの言葉に、エライザが、はっとしたように顔を上げた。


「もしかしたら…スコールさんが言っていた、『ハンドガン』のことかもしれない。私、明日から、使い方を教えてもらえるのかな…」


 エライザは、そう言って、期待に満ちた瞳でバッシュを見つめた。彼女の瞳には、もう、怯えや不安の色はなかった。


「ああ。スコールは、そう言っていた。だが、危険なことには変わりない。もし、無理だと思ったら、すぐにやめるんだ。」


 バッシュは、そう言って、エライザの小さな肩に手を置いた。彼女が、自分を守る力を求めていることは嬉しい。しかし、そのために、彼女が危険な目に遭うのは、彼が一番恐れていることだった。


「…ありがとう、バッシュ。でも、大丈夫。私、頑張るから。バッシュを守るために…」


 エライザの言葉に、バッシュは何も答えず、ただ優しく彼女の頭を撫でた。


 その時、アリサが、ふと、不思議そうに呟いた。


「ねえ、バッシュ…スコールさんが言っていた『力』って、なんだと思う?ぼくたちの国の魔力と、何か関係があるのかな?」


「わからない…だが、エライザの故郷を滅ぼした原因が、その『力』を求めていたことにあるとすれば、俺が探すべきものは、その『力』の正体だ。」


 バッシュは、そう言って、自分の左手の指輪に触れた。この指輪が、彼の過去と、そしてこの世界の謎を解く鍵なのだろうか。


「きっと、明日から、少しずつ分かってくるよ。ぼくたち、スコールさんとリズさんの助けを借りて、真実にたどり着こう。三人で、力を合わせて…」


 アリサは、そう言って、バッシュとエライザに笑顔を向けた。その言葉に、彼らの心の中に、新たな希望の光が灯った。


 明日から始まる、ローレル王国での新しい生活。それは、彼らの旅を、そして運命を、大きく変えることになるだろう。

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