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key〜光の先へ〜  作者: 初 未来
第5章 科学技術の王国

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第5章 (3)協力

 アリサは、持っていた水筒からお茶を、小さな木製のカップに注いでいく。き火のそばに座るバッシュとスコールにそれを手渡すと、疲れた顔に柔らかい笑みを浮かべた。


「堅い話はそのくらいで、ちゃんと休もう。」


 そう言って、アリサはエライザの隣に座り、彼女に抱きついた。エライザは、アリサの温かさに身を委ね、安心したように微笑んだ。


 夜のとばりが降りた森は、静寂に包まれている。き火の炎だけが、パチパチと音を立て、あたりを温かく照らしていた。時折、遠くで、獣の鳴き声が聞こえてくるが、それすらもこの静寂を壊すことはなかった。


 バッシュは、アリサがれてくれたお茶を一口飲む。熱いお茶が、冷えた体にじんわりと染み渡っていく。その温かさが、彼の心の中に張りつめていた緊張を、少しだけ緩めてくれた。


「…助かったよ、アリサ。」


 バッシュの言葉に、アリサは顔を上げ、いたずらっぽく笑った。


「どういたしまして!それにしても、スコールさんの話は、本当に驚きの連続だったね。まさか、魔法も剣も使えなくても戦える武器があるなんて…」


 アリサはそう言って、スコールに視線を向ける。スコールは、そんな二人の様子を面白そうに眺めながら、お茶をすすっていた。


「まだまだ驚くことはあるさ。ローレル王国は、君たちの想像を遥かに超えるものに満ちている。でもまあ、それはおいおい話すとして…」


 スコールは、そう言うと、焚き火に視線を戻した。


「それにしても、この森は不思議な森だな。人工の森だなんて言っていたけど…この空気は、とても澄んでいる。まるで、魔法の力が満ちているみたいだ。」


 バッシュが言った言葉にエライザは静かに頷いた。


「うん…故郷の森とは違うけど、とても心地いい。この空気は…何かの力が、人工的に創り出されているのかな?でも、その力はとても穏やかで…とても落ち着くわ…」


 エライザの声は、穏やかで、優しかった。バッシュは、そんな彼女の様子を見て、安堵の表情を浮かべた。彼女が元気を取り戻してくれたことが、何よりも嬉しかった。


 バッシュは、再びお茶を一口飲むと、夜空を見上げた。木々の隙間から見える星は、まるで宝石のように輝いている。この星空の下で、彼らの旅は、また新たな一歩を踏み出した。その先には、どんな出会いが、そしてどんな困難が待ち受けているのだろうか。バッシュは、静かに、しかし強く、明日への決意を心に刻み込んだ。


 アリサとエライザは、一枚の毛布にくるまり、互いに寄り添いながら眠りについていた。焚き火のそばで、バッシュは剣を立てたまま静かに周囲を警戒している。スコールもまた、焚き火の炎を見つめながら、じっと起きているようだった。


「なあ、バッシュ。」


 スコールが静かに呼びかけた。バッシュは、視線は森に向けたまま、スコールの言葉に耳を傾けた。


「…何しにローレルに来たんだ?」


 バッシュは少し迷った後、言葉を選んで答えた。


「正直、よくわからん。だが、皇国で聞いた『力』というものを止めるため、かもしれない…」


 スコールは、その言葉に興味を引かれたように、目を輝かせた。


「…面白そうだな。よし、協力してやるよ。」


 バッシュは、スコールの方に顔を向けた。


「なぜそこまでする?」


「はじめにも言っただろ?俺は《《今は》》国の科学者ってわけじゃないからな。ローレルは初めてなんだろ?何一つ知らないお前らが動くのは難しいだろうし、案内してやるよ。宿も、俺の研究所でいいだろ。まあ、散らかってるけど、休めるさ。」


 スコールの言葉に、バッシュは再び深く考え込んだ。確かに、彼らがこの未知の国で動くには、スコールの協力は不可欠だ。彼の言葉には、どこか胡散臭うさんくさい響きがあるが、これまでの行動に嘘はなかった。


「わからない、なんでそこまでしてくれるんだ?」


 バッシュが改めて問うと、スコールは少しだけ真面目な顔をした。


「うーん…好奇心、かな。それに、あんたたちは悪い奴には見えない。面白そうだしな。科学者が面白いことに飛びつかなきゃ科学の進歩はありえないからな。俺は好奇心の塊だ。でも、最後に決めるのはあんただ。」


 スコールの言葉は、バッシュの心を揺り動かした。未知の国で一人で動くリスク、スコールを信じるリスク、どちらを選ぶべきか。しかし、彼には守るべき存在がいる。


「…分かった。頼む。」


 バッシュは、そう言って小さく頷いた。スコールは、その言葉を聞くと、にこりと笑って、親指を立てた。


 夜の闇の中、新たな仲間を得た彼らの旅は、明日、いよいよ本格的に始まろうとしていた。


 翌朝、バッシュは夜明けとともに目を覚まし、すぐに旅支度を整えた。剣の手入れを終え、鞍を馬に載せ、いつでも出発できる状態にしておく。朝露に濡れた木々からは、清々しい空気が立ちこめ、小鳥たちのさえずりが響いていた。


 やがて、アリサとエライザが目を覚ます。毛布から顔を出し、朝日を浴びるエライザの頬には、わずかな赤みが戻っていた。


「…おはよう、バッシュ。」


 エライザはにっこりと微笑み、優しく挨拶した。バッシュも、そんな彼女の笑顔に安堵し、静かに応える。


「ああ、おはよう。よく眠れたか?」


「うん。森の空気が、とても心地よくて…」


 横でアリサが目を覚ます。


「おはよう!なんだか、体が軽いよ!」


 アリサは伸びをしながら元気な声で言った。


 スコールはすでに起きており、焚き火の残火に携帯食を温めている。バッシュたちがそばに寄ると声をかけた。


「さあ、朝食にしよう。」


 彼らは温かい携帯食を急いで平らげ、再び旅路につく準備を整えた。


 スコールは、馬にまたがりながら、自信に満ちた表情で言った。


「ここからは、道も整備されている。安全だ。俺の研究所まで、そんなに遠くはないさ。出発しよう!」


 彼の言葉に、バッシュたちは頷き、馬を進めた。夜が明けていく人工の森は、朝の光を浴びて一層幻想的な光景を作り出している。木漏れ日が、地面に様々な模様を描き出し、光と影のコントラストが、まるで絵画のようだった。


 彼らの旅は、新たな希望を胸に、ローレル王国の王都へと続いていく。

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