表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
key〜光の先へ〜  作者: 初 未来
第4章 異国へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/102

第4章 (13)国境へ

 その時だった。


「やれやれ…」


 後ろから、スコールの呆れたような声が聞こえてきた。彼は、馬上で腰から奇妙な機械的な筒のようなものを取り出すと、小さな弾を込めた。それは、剣でも魔法の杖でもない、彼らの知らない武器だった。


 スコールは筒をキマイラに向け、迷うことなく《《引き金》》を引いた。パーン、と乾いた、しかし大きな音が森に響き渡る。撃ち出された弾は、閃光を放ちながらキマイラの山羊の頭に命中した。


 瞬間、キマイラは、まるで時間が止まったかのように動きを止め、全身が氷に覆われていく。その炎は、勢いを失い、やがてかき消えた。


 バッシュは、その信じられない光景に、思わず息をのんだ。


「な…なんだ…?」


「魔法…なのか?水魔法…!?」


 アリサもまた、驚きと困惑の表情でスコールを見つめる。


 スコールは、キマイラが完全に凍りつくのを確認すると、高らかに叫んだ。


「一時的な足止めにしかならないだろう!すぐに動き出すぞ!」


 彼の言葉に、バッシュとアリサはハッと我に返った。バッシュは、キマイラと剣士たちの間をすり抜けるように馬を走らせた。エライザの結界が、まだかろうじて彼らを守っている。


「走れ!国境はもうすぐだ!」


 スコールの声が、彼らの背中を押す。


 凍りついたキマイラと、戸惑う剣士たちを置き去りにし、バッシュたちは、ローレル王国へと続く道をひたすらに走り続けた。


 バッシュたちは、スコールの馬の奇妙な動きに導かれるまま、ひたすら森の奥へと馬を走らせた。背後からは、キマイラの凍りついた体が砕け散った音が聞こえ、追っ手たちが再び迫ってきている気配がする。このままでは、また追いつかれてしまうだろう。


「国境って言ったって、国交なんてないんだろ?道なんてないじゃないか!」


 アリサが焦った声でスコールに問いかける。彼らの前には、どこまでも続く木々の壁と、時折現れる険しい岩場があるだけだ。


 スコールは、そんなアリサの言葉に、にやりと笑って応えた。


「その通り!道なんてないさ!このローレル王国とアイシア皇国の間には、古代から続く強力な結界が張り巡らされている。だが、その結界にも、わずかな隙間があるんだ。そこから突入するしかない!」


 スコールの言葉に、バッシュの眉間に深いしわが刻まれる。


「結界…触れればどうなる?」


 バッシュの問いに、スコールの顔から笑みが消えた。


「生きては済まないだろうな。運が悪ければ、そのまま命を落とすことだって珍しくない。皇国が誇る最高の魔導師たちが、何代にもわたって築き上げてきたものだからな。強力な魔法の力を持つ君たちでも、触れればただでは済まない。」


 彼の言葉は、彼らの心に重くのしかかった。しかし、スコールは再び胸を張り、自信に満ちた表情で言った。


「だが、心配はいらない!僕のこの馬が、その隙間を知っている!」


 そう言って、スコールは自分の馬の首をぽんと叩いた。機械仕掛けの馬は、まるで応えるかのように、わずかに光を放った。


「要するに…あんたは知らないのね?」


 アリサが、あきれたように呟く。するとスコールは、不敵に笑って言い放った。


「おう!知らん!」


 バッシュは、そのあまりにも無責任な言葉に、思わず顔をしかめた。


「…大丈夫なのか、それ…?」


「任せてくれ!僕の馬は優秀だ!」


 スコールの言葉が信頼できるのか、それともただの楽観主義なのか、判断がつかないまま、彼らはさらに速度を上げた。背後からは、追っ手たちが馬を走らせる音が、次第に近づいてくる。彼らに残された時間は、もうほとんどなかった。


 その時、スコールの馬が、突然、進路を大きく変えた。まるで何かに導かれるかのように、木々の隙間をい、険しい岩場へと向かっていく。スコールは、馬の反応を確かめるように、手元の計器を覗き込む。


「ここだ!ここしかない!」


 スコールが叫んだ。彼の指差す先には、他の場所と何ら変わりない、ごく普通の岩壁があるだけだ。だが、その岩壁に近づくと、空気の流れがわずかに変わるのを感じた。


「行くぞ!」


 スコールはそう叫び、迷うことなく、馬ごと岩壁に突っ込んでいった。


 バッシュは、目の前の信じられない光景に、一瞬躊躇する。しかし、背後からは、剣士たちの怒声と、キマイラの咆哮が聞こえてくる。


「行くぞ、エライザ!」


 バッシュが叫ぶと、エライザは、恐怖で体を震わせながらも、彼の背中を強く抱きしめた。


「うん…!」


 バッシュは、意を決し、馬の腹を強く蹴った。彼とエライザを乗せた馬は、スコールの後を追うように、結界の隙間へと突っ込んでいく。


「え、え、ちょっと待って!心の準備が…!」


 アリサの悲鳴が聞こえたが、時すでに遅し。アリサの馬もまた、彼らの後を追うように、結界の隙間へと突入していった。


 瞬間、彼らの視界が、白い閃光に包まれた。全身を、まるで無数の針で刺されるような激しい痛みが襲う。しかし、それは一瞬で、次の瞬間には、彼らは全く別の場所に立っていた。


 そこは、先ほどの森とは全く違う場所だった。澄んだ空気に満ち、柔らかな木漏れ日が降り注ぐ、幻想的な森。彼らは、ついにローレル王国の地に足を踏み入れたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ