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key〜光の先へ〜  作者: 初 未来
第3章 皇都

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第3章 (17)ギルドへ

 ロイドは、バッシュとエライザの覚悟を聞き終えると、カップをテーブルに置き、二人の顔を見つめた。


「よし。お前たちの覚悟は分かった。なら、これからの道は、我々も共に歩もう。」


 ロイドの言葉に、バッシュは静かに頷き、エライザは嬉しそうに微笑んだ。


「でだ、まずは俺がグラハム様の様子を見てくる。呪いは解けたが、まだ油断はできないからな。ゴールドウィンやサヤカもいるが、直接容態を確認しておきたい。」


 ロイドは立ち上がりながら言った。


「バッシュと嬢ちゃんは、その間に冒険者ギルドにでも行ってみるか?色々な情報が集まる場所だ。俺たちが探している手がかりが見つかるかもしれない。」


 バッシュは少し考えてから答えた。


「わかった。行ってみる。」


 エライザも、新しい場所に興味津々といった様子で明るく言った。


「うん、行ってみたいな。」


「ああ、分かった。じゃあ、また後でな。何か動きがあったら、すぐに連絡する。」


 ロイドはそう言って、治療院へ足早に戻っていった。彼の足取りは、先ほどまでの疲労を感じさせないほど軽やかだった。彼の心には、グラハムの回復への安堵と、若者たちの新たな旅立ちへの期待が入り混じっていた。ゴールドウィンたち、そしてソフィアも、きっとグラハムの目覚めを今か今かと待ち望んでいるだろう。

 バッシュとエライザは、ロイドの店を後にし、バリスの冒険者たちが集まるというギルドへと向かった。ギルドは街の中心部に位置し、その入り口からは活気ある声が漏れ聞こえてくる。


「ギルドって、どんなところなんだろう?」


 エライザが、少し目を輝かせながらバッシュに尋ねた。初めての場所に、好奇心を隠せない様子だ。


「さあな。だが、色々な情報が集まる場所だと聞いている。俺たちの探している手がかりが見つかるかもしれない。」


 バッシュはそう答えながら、ギルドの重厚な扉に手をかけた。扉を開けると、そこは一変して喧騒に満ちた空間だった。


 広いホールには、様々な種族の冒険者たちがひしめき合っている。壁には依頼が張り出され、酒場のようなカウンターでは、冒険者たちが杯を傾けながら談笑している。剣や鎧の擦れる音、酒場のざわめき、そして力強い笑い声が、ホール全体に響き渡っていた。


 エライザは、その圧倒されるような活気に思わず身をすくめた。里で静かに暮らしてきた彼女にとって、これほどの喧騒は初めての体験だ。バッシュはそんなエライザの手をそっと握り、人混みを縫うように奥へと進んでいく。


「すごい人だね、バッシュ…!」


 エライザは、バッシュの腕にぴたりと体を寄せながら、興奮した面持ちで周囲を見回した。


「ああ、だが、ここなら何か有益な情報が得られるかもしれない。焦らず探してみよう。」


 バッシュはそう言って、壁に張り出された依頼を眺め始めた。しかし、そこに書かれているのは魔物の討伐や護衛といった一般的な依頼ばかりで、彼らが求めているような過去の手がかりや、世界の真実に関わるような情報は一切見当たらない。


「うーん、ここにはなさそうだね…」


 エライザは、肩を落として呟いた。


「いや、まだ諦めるのは早い。ああいうカウンターで、酒を飲みながら情報を集めている者もいる。地道に探すしかないだろう。」


 バッシュはそう言って、カウンターの方へと視線を向けた。彼らは、ここで新たな手がかりを見つけることができるだろうか。


 バッシュとエライザは、ホールの奥にあるカウンター席へと向かった。埃っぽい木のカウンターには、いくつもの空のジョッキが転がり、酒の匂いが立ち込めている。二人は空いている席を見つけて腰を下ろした。エライザは、やはりバッシュの隣にぴたりと体を寄せ、カウンターの上に置かれたメニュー表を物珍しそうに眺めている。


「とりあえず、何か注文するか?何か飲めば、少しは落ち着く。」


 バッシュが尋ねると、エライザは小さく頷いた。


「うん…ジュースとか、あるかな?」


 マスターと思しき男に声をかけ、エールとベリージュースを注文する。しばらくすると、注文した飲み物が運ばれてきた。エライザは、運ばれてきた真っ赤なベリージュースに目を輝かせ、一口飲むと「美味しい!」と幸せそうに微笑んだ。その姿に、バッシュの表情も少しだけ和らぐ。


 周囲からは、冒険者たちの喧騒が絶え間なく聞こえてくる。彼らの会話は、魔物の討伐から、成功した依頼の武勇伝、そして街の噂話まで多岐にわたる。バッシュは、耳を澄ませて情報がないか探した。


「聞いたか?最近、騎士団の動きがどうも怪しいって話だ。」


 隣の席から、ひときわ大きな声が聞こえてきた。バッシュはそっと耳を傾ける。


「ああ、またか。なんでも、最近妙に荒っぽいやり方で、ゴロツキどもを捕まえているらしいな。捕まえるだけならまだしも、何かを隠してるような素振りだとか…」


「それだけじゃない。魔術師団も一枚岩じゃないらしいぞ。内部で派閥争いが起きてるとか、いないとか…」


 別の冒険者が、ひそひそと囁く。


「魔術師団のトップにいる偉いさんが、最近また何か企んでるって噂だぜ。なんでも、古の魔法を巡って、意見が割れてるんだとよ。」


「へえ、物騒な話だな。でも、俺たちには関係ないか。」


「そうだな。せいぜい巻き込まれないようにな。」


 会話はすぐに別の話題に移っていったが、バッシュの耳にはその言葉がはっきりと残っていた。騎士団の不穏な動き、そして魔術師団の内部対立。特に魔術師団の「古の魔法」という言葉が、エライザに関係する「精霊魔法」と無関係ではないような気がした。


「バッシュ…」


 隣から、不安げなエライザの声が聞こえた。彼女も、その不穏な噂を聞いていたようだ。


「ロイドさんが言ってたことと、関係があるのかな…?」


 エライザは、ロイドが話していた「裏切り者」や「皇国の内部にいる過激な思想を持つ者」という言葉を思い出したようだった。


 バッシュは静かに頷いた。


「おそらく、な。だが、もう少し具体的な情報が必要だ。このままここにいても、これ以上のものは得られないだろう。」


 バッシュは、目の前のエールを一口飲むと、静かに立ち上がった。エライザもそれにつられて立ち上がる。


「よし、出よう。また別の場所を探すか、ロイドのところに戻るか…」


 バッシュとエライザは、喧騒の中、次の行動を模索するためにギルドを後にした。

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