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key〜光の先へ〜  作者: 初 未来
第3章 皇都

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第3章 (10)新たな手がかり

 バッシュとエライザは、再び図書館へ向かう準備を整えようと、ロイドの店へ戻ろうとした。その時、ロイドが呼び止めた。


「待て。まずは、腹ごしらえでもするか。朝食はまだだろう?」


 ロイドの言葉に、バッシュとエライザは顔を見合わせた。確かに、朝から緊迫した状況に巻き込まれ、食事など忘れていた。


「あ、はい…」


 エライザは少し戸惑いながらも、素直に答えた。


 ロイドは立ち上がり、厨房へと向かう。グスタフが手際よく調理を始め、ゴールドウィンも黙々と手伝っている。あとから駆けつけたサヤカは、まだ少し疲労の色が見えるものの、テーブルを拭き始める。


「ここは俺たちの家だ。あんたたちも家族同然だ。遠慮はいらない。」


 ロイドは、優しい声でそう言った。彼の言葉は、バッシュとエライザの心を温かく包み込んだ。敵の襲撃という緊迫した状況の中、彼らの温かさが、二人に深い安堵をもたらした。


 食事が運ばれてくる。焼きたてのパン、温かいスープ、そして香ばしい肉料理。どれも素朴ながらも滋味深い味で、二人の心と体を癒やしていく。


 食事が終わり、バッシュとエライザは再び図書館へと向かった。ロイドたちは治療院の片付けと、警戒態勢の強化を進めるだろう。


 図書館に到着した二人は、早速、それぞれの目的の書架へと向かった。バッシュはローレル王国に関する書物をさらに深く調べ、エライザはエルフの精霊魔法や解呪に関する文献を、今度はより実践的な視点から探し始めた。


 エライザは、図書館の書架の間を縫いながら、「精霊石」「呪い」「封印」「解呪」といったキーワードに特化した文献を探し続けた。昨日読んだ「エルフの伝承」は抽象的すぎて、具体的なヒントが得られなかったからだ。


「もっと具体的な情報が欲しい…」


 エライザは、小さく呟いた。グラハムの呪いを解くためには、実践的な知識が必要だ。


 その時、彼女の視界に、一冊の古びた小冊子が飛び込んできた。それは、他の書籍に紛れるように、ひっそりと置かれていた。特に装丁が凝っているわけでもなく、むしろ読み込まれてボロボロになっている。しかし、なぜかその小冊子が、エライザの注意を強く引いた。


「…これは…?」


 エライザは、そっとその小冊子を手に取った。タイトルは何も書かれておらず、背表紙も擦り切れて文字は読めない。だが、まるで誰かの日記か、個人的な手記のような雰囲気があった。


 彼女は、直感的に何かを感じ、その小冊子を開いた。すると、そこに書かれていたのは、整然とした筆跡で記された、あるエルフの巫女の記録だった。


「…精霊の声が、聞こえない…?」


 小冊子の冒頭に書かれていたのは、巫女の困惑の声だった。精霊の声を聞くことができないという記述に、エライザは眉をひそめた。エルフの巫女にとって、精霊の声は力の源であり、使命の根幹をなすもののはずだ。


 さらに読み進めると、その巫女が、失われた精霊の声を取り戻すために、様々な試行錯誤をしている様子が綴られていた。古代の儀式、忘れ去られた詠唱、そして、禁忌とさえされる方法への言及。


 そして、一つの記述がエライザの目を釘付けにした。


「……精霊石を、活性化させる…ためには…」


 そこには、精霊石を活性化させるための手順が、具体的な薬草や、儀式の方法と共に記されていた。それは、エライザがペンダントに触れた時に感じた「熱い感覚」を、さらに確かなものにするための方法のように思えた。


「これだわ…!」


 エライザは、その小冊子に書かれた内容に、確かな手応えを感じた。グラハムの呪いを解くための「精霊魔法」を完全なものにするには、自身の「精霊石」の力を活性化させる必要があるのかもしれない。


 小冊子を読み進めていくと、さらに重要な記述が目に飛び込んできた。


「精霊石の活性化…それは、巫女の命を削る行為…」


 エライザは、その言葉に思わず息を呑んだ。精霊石を活性化させることは、巫女自身の命を犠牲にする可能性があるというのだ。彼女の胸に、冷たい不安が広がった。


 しかし、その後に続く一文が、エライザの心を大きく揺さぶった。


「…だが、真の『鍵』たる巫女は、その身を犠牲にすることなく、精霊石の力を引き出すことが可能である。それは、古の誓いを守る、ただ一つの道。」


「真の『鍵』たる巫女」…その言葉が、エライザの脳裏で強く響いた。それは、吟遊詩人の歌にもあった、「鍵」という言葉。そして、自身の命を犠牲にすることなく力を引き出せるという記述。


(私なら…私のペンダントなら…もしかして…)


 エライザの心には、希望と不安が入り混じっていた。巫女の命を削るという危険な代償。しかし、「真の鍵」であるならば、その代償なしに力を引き出せる可能性がある。そして、その方法は、古の誓いを守る「ただ一つの道」だと記されている。その「誓い」が何なのかは不明だが、それが彼女の使命と深く関わっていることは確かだった。


 エライザは、小冊子をギュッと握りしめた。これが、グラハムを救う道、そして自身の運命の真実を解き明かすための、重要な手がかりになるかもしれない。




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