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key〜光の先へ〜  作者: 初 未来
第3章 皇都

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第3章 (6)予期せぬ真実、見つけた希望

 その頃、バッシュもまた、広大な書架の一角で集中して本を探していた。彼の視線が、ふと一冊の古びた本に引き寄せられた。豪華な装丁が施されているわけでもなく、むしろその背表紙は使い込まれて擦り切れている。しかし、何か無形の力に導かれるように、彼の目はその本に釘付けになった。


 それは「ローレル王国について」と題された、長年にわたって書き継がれてきたような資料だった。一国の歴史や文化、政治体制、そして主要人物について詳しくまとめられているようだ。バッシュは、なぜこの本にこれほど惹きつけられるのか、自分でも分からなかった。だが、彼の直感が、この本が何か重要な情報を含んでいると告げていた。


 彼はその本を手に取り、静かにページを開いた。彼の指輪と背中の刻印、そしてグラハムの言葉に秘められた「皇国に裏切り者」という謎。これらの手がかりが、ローレル王国という国とどう繋がるのか、バッシュの心はざわめいた。


 バッシュは、なぜか強く惹きつけられた「ローレル王国について」という古びた資料を手に取り、ページをめくり始めた。最初はローレル王国の歴史や政治体制について書かれているかと思われたその本は、読み進めるうちに、全く予想外の内容へと変わっていった。


 彼の目に飛び込んできたのは、まるで物語とは思えないような、詳細な実験記録のような記述だった。


「これは…ローレル王国の行った実験の記録か?」


 彼の脳裏に、不穏な疑問符が浮かぶ。そして、さらに驚くべき言葉が続く。


「科学技術…超電磁砲?」


 バッシュは眉をひそめた。超電磁砲?それは彼の知る剣や魔法の知識とは全く異なる、異質な響きを持つ言葉だった。この世界にそんな技術が存在するのか、あるいは過去に存在したのか。彼の困惑は深まるばかりだ。


 そして、その疑問をさらに深める記述が。


「ん?疑似人体の生成実験…何体も製造…失敗…」


 バッシュの指が、その恐ろしい記述の上をなぞった。疑似人体…つまり、人工的な人間?それが何体も製造され、そして失敗したという記録。彼の背筋に冷たいものが走った。何のために、そのような実験が行われたのか。そして、その失敗とは、一体何を意味するのか。


 この記録は、ローレル王国が、彼の想像をはるかに超える禁断の科学技術に手を染めていたことを示唆していた。そして、この「疑似人体」という言葉が、自身の過去、背中の「875」の刻印と無関係であるはずがないと、バッシュは直感した。


 バッシュは、「ローレル王国について」という資料に記された「疑似人体の生成実験、何体も製造…失敗…」という記述に、強く引きつけられた。彼の脳裏には、自身の背中に刻まれた謎の数字「875」が浮かび上がった。


(疑似人体……ナンバリング?)


 バッシュは、そう呟いた。もし、自分がその「疑似人体」と呼ばれるものの一つだとしたら、背中の「875」という刻印は、製造された個体を示すためのナンバリングではないだろうか。全身を駆け巡るこの既視感、そして過去の記憶が一切ないという自身の状態。全てが、この恐ろしい実験の記述と符合するように思われた。


(刻印に関係があるのか?…わからない…)


 確信に近い感覚がありながらも、バッシュはまだそれを完全に受け入れることができなかった。あまりにも現実離れした話だ。しかし、この強烈な疑念は、彼の心を深く揺さぶった。


(ローレル王国か…)


 バッシュは、その国の名をつぶやいた。これまで全く関わりのなかったはずの「ローレル王国」が、自身の過去の謎に深く関わっている可能性が浮上したのだ。この国が、彼の過去、そして自身の存在の根源を解き明かす鍵となるかもしれない。


 しかし、この衝撃的な情報を一人で抱え込むには重すぎた。彼はエライザとこの情報を共有し、共に考える必要があると直感した。


 バッシュは本をそっと閉じ、エライザを探し始めた。広大な図書館の中で彼女を見つけるのは容易ではないが、エライザのいるべき場所、つまり「エルフの伝承」や「精霊魔法」といった書架の近くを探せば、見つけられるはずだ。


 彼は、エライザが最初に選んだ古代史の書架の方へと足を進めた。棚と棚の間を縫うように進むと、遠くに彼女の銀色の髪が見えた。エライザは、まだ熱心に本を読み込んでいるようだ。


 バッシュは、彼女の元へと歩み寄った。


「エライザ。」


 バッシュが声をかけると、エライザはハッと顔を上げた。彼女の顔には、難解な書物を読み解こうとする集中と、かすかな疲労の色が浮かんでいる。


「バッシュ!何か見つかった?」


 エライザは、すぐにバッシュに尋ねた。彼女もまた、重要な手がかりを見つけようと必死だったのだろう。


 バッシュは、手に持っていた「ローレル王国について」という資料をエライザに見せた。彼の表情は、普段の冷静さとは異なり、どこか複雑なものだった。


「ああ、見つけた。だが…お前に聞かせたい、少しばかり奇妙な話だ。」


 バッシュの言葉に、エライザは真剣な面持ちで彼を見つめた。


 バッシュは、資料を読みながら、そこに記されていた内容をそのままエライザに伝えた。


「これは…ローレル王国が行った、何かの実験の記録のようだ。『科学技術…超電磁砲』という、よく分からない記述もある。だが、一番気になったのはこれだ…」


 バッシュは、ページを指差した。


「『疑似人体の生成実験…何体も製造…失敗…』とある。」


 彼は、エライザの反応を測るように、一瞬言葉を切った。どんな反応をするか、不安がなかったわけではない。しかし、エライザにはもう何も隠すことはないと、バッシュは決めていた。彼が信頼を置く唯一の存在が、エライザだったからだ。


 エライザは、その言葉を聞いて、目を大きく見開いた。彼女の顔からは血の気が引いていくのが見て取れる。まるで、想像を絶する世界の裏側を覗き込んだかのようだった。


「疑似人体…?そんなことが…」


 エライザの声は震えていた。彼女の知る世界の常識とはかけ離れた内容に、困惑と恐怖が入り混じる。


 バッシュは、自身の背中を指差した。


「そして…俺の背中にある『875』の刻印だ。もし、この『疑似人体』にナンバリングがされていたとすれば…」


 バッシュの言葉に、エライザの瞳はさらに大きく見開かれた。彼女の視線は、バッシュの背中に吸い寄せられるかのように注がれた。彼の過去の謎が、今、恐ろしい形で繋がり始めている。


「これ…これは…ローレル王国が行った実験記録…バッシュ…これ…は…?」


 バッシュから自身の背中の刻印と「疑似人体」の生成実験の関連性を聞かされたエライザは、最初は激しく困惑し、その瞳には動揺の色が浮かんでいた。彼女の知る世界の常識を遥かに超える事実に、思考が追いつかないようだった。


 しかし、エライザはすぐに我に返った。彼女は、目の前で不安げに見つめるバッシュを、まっすぐに、そして深く見つめ返した。その瞳には、彼への変わらぬ信頼と、全てを受け入れようとする温かい光が宿っていた。


「バッシュは…バッシュよ。」


 エライザは、優しく、しかし確信に満ちた声でそう言った。彼女の言葉は、バッシュが何者であろうと、彼が彼自身であることに変わりはないという、揺るぎない肯定だった。その微笑みは、彼の存在を丸ごと包み込むような温かさを持っていた。


 そのエライザの笑顔を見た瞬間、バッシュの心の中で渦巻いていた、自身の出自に関するモヤモヤとした不安や混乱は、一瞬にして消し飛んだ。彼は、自分が何者であるかという問いに囚われ、先の見えない霧の中にいるような感覚だったが、エライザの言葉が、その霧を晴らしてくれたのだ。彼女の揺るぎない信頼が、バッシュに深い安堵と、再び前を向く力を与えてくれた。


 エライザは、バッシュの不安を打ち消すように、明るく微笑んだ。彼女の瞳は、未来を見据えるような強い光を宿している。


「まずはグラハムさんの呪い、解かないとね!」


 エライザはそう言って、手にしていた一冊の本をバッシュに見せた。それは、図書館の書架から見つけ出した「エルフの精霊魔法」について書かれた古びた書物だった。


 そして、エライザは特定の一ページを開いた。そこには、バッシュには読むことのできない、複雑なエルフの古代文字がびっしりと書き込まれている。しかし、エライザにはそれが読めるのだ。


「このページにはね…あらゆる負の力に対して有効な、精霊魔法の詠唱が書かれているみたい…」


 エライザは、そう言いながら、書物に記された文字をゆっくりと読み始めた。彼女の口から紡ぎ出される言葉は、精霊の囁きのように神秘的で、バッシュの耳には心地よい響きとして届いた。それは、グラハムの呪いを解く、確かな希望の光だった。


 エライザがエルフの精霊魔法の書物を読み上げると、彼女の体の中に熱いものが湧き出すような感覚が広がる。それは、今すぐ何かが起こるわけではないが、不思議と「できる」という予感に満ちていた。


「何かね、読んでると体の中に熱いものが湧き出す感じがするの…今すぐ何か起きるわけじゃないけど…」


 エライザは、その感覚をバッシュに伝えながらも、まだ漠然とした状態に困惑していた。


「もっと情報いるよね…何か道具いるのかな…1人じゃできない?2人必要?いろいろ書いてるんだけど、何が正しいのかまでは…」


 彼女の表情は、希望と同時に、複雑な古代の知識を解読することの難しさを物語っていた。書物には多くの情報が書かれているが、具体的な手順や、呪いの種類に応じた適切な方法、必要な準備については、まだ不明瞭な点が多いようだった。



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