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key〜光の先へ〜  作者: 初 未来
第2章 道連れ

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第2章 (7)思わぬ手がかり

 荷馬車の揺れが続く中、騎士はかすかに呻き声を上げた。バッシュはすぐに騎士の顔を覗き込む。その瞳が、うっすらと開かれた。血の気が失せ、苦痛に歪んだ顔だが、その目には確かな意識の光が宿っていた。


「…無事…か…ソフィア…」


 騎士は、震える声で、その傍らに座り込む子どもに視線を向けた。エライザに抱きしめられ、震えながらも涙をこらえているその子どもは、この国の公爵令嬢ソフィアだった。


「はい、無事です。」


 震えるソフィアの代わりにエライザが、優しく答えた。


「すまない…よくぞ……グラハムが、礼を申す……」


 騎士は、痛みに喘ぎながらも、途切れ途切れにそう告げた。グラハムは娘の無事を確認すると、その安堵からか、深い息を吐いた。そして、彼の視線が、ふとバッシュの左手の薬指に留まった。


 バッシュの指輪。この謎めいた指輪だ。


 グラハムの目は、その指輪を捉えた途端、驚愕に見開かれた。苦痛に歪んでいた顔に、にわかに信じられないものを見たかのような衝撃が走る。


「その…指輪は…!?」


 騎士は、掠れた声で、しかし強い力でバッシュの腕を掴もうとした。しかし、その力は弱く、すぐにずり落ちてしまう。


「なぜ…あなたが…」


 その言葉は、驚きと、どこか深い絶望にも似た響きを持っていた。バッシュの指輪が、この国の精鋭である騎士の、しかも国の重責を担う者と、何らかの深い繋がりを持っていることを示唆していた。


 バッシュは、グラハムの反応に驚き、指輪を隠すように手を握りしめた。しかし、グラハムはもはやその力もなく、視線だけをバッシュの指輪に固定していた。


「あなた…は…ナンバ…」


 グラハムは、途切れ途切れの声で、確かにナンバーと言った。バッシュの背中の「875」という数字をのことだろうか?その言葉は、まるで彼の記憶の奥底に眠る何かを呼び覚ましたかのようだった。バッシュの指輪と、背中の刻印。この騎士は、その両方を知っている可能性がある。


「どういうことだ!?指輪を知っているのか!?これはなんだ?」


 バッシュは、焦燥感からグラハムの肩を揺さぶった。しかし、グラハムは意識を保つのがやっとで、苦しそうに息をするばかりだ。


 グラハムは、もはや蚊の鳴くような声で、しかし確かな言葉を絞り出した。


「皇国…に…裏切り…者が…」


 その言葉は、バッシュの心臓を鷲掴みにした。アイシア皇国に裏切り者。それが、彼らを襲った真の理由なのだろうか。


 騎士は、さらに何かを伝えようと、必死に口を開く。


「…もう一つ…『鍵』を…」


 彼の言葉は、そこで途切れた。グラハムは、深い傷と力尽きた体で意識を失った。しかし、かろうじて微かな息遣いが聞こえる。彼は一命を取り留めたのだ。ソフィア公爵令嬢を護衛する、皇国の精鋭騎士は、バッシュに真実の断片を告げ、深い昏睡状態に陥った。


「お父様…!」


 ソフィアが、グラハムの体にすがりつき、悲痛な叫びを上げた。エライザは、ソフィアを抱きしめ、共に涙を流した。グラハムの口から「鍵」という言葉が出たことに、エライザは内心で深い衝撃を受けていた。自分が里を失い、母を奪われたのは、この「鍵」ゆえなのだろう。そして今、ソフィアもまた、父を目の前で傷つけられ、同じような絶望に直面している。幼いソフィアの震える体温を感じながら、エライザは、自分自身の里と母を失った日の痛みを重ね合わせ、胸が締め付けられるのを感じた。


 バッシュは、その場で立ち尽くしていた。グラハムが告げた言葉が、彼の頭の中でこだまする。


「皇国に裏切り者」そして「もう一つ『鍵』が。」


 エライザが「鍵」であること。そしてバッシュの指輪も「鍵」かもしれないということ。さらに、もう一つ「鍵」が存在するのか。妖精の言葉、そしてこの騎士の言葉。彼らの旅は、世界の命運をかけた、さらに大きな「動き」の中に巻き込まれていくことを予感させた。そして、ソフィアが襲われた理由、背後にいる黒幕を知る唯一の人物であるグラハムの言葉は、今後の旅の重要な手がかりとなるだろう。

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