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key〜光の先へ〜  作者: 初 未来
第2章 道連れ

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第2章 (4)森を抜けて

 バッシュは、森に再び静寂が戻ったことを確認すると、呆然と立ち尽くすエライザの方へ振り向いた。彼の表情には、戦闘の厳しさと、彼女への深い気遣いが混じり合っていた。


「エライザ?もう大丈夫だ。怪我はないか?」


 彼の声は、戦闘中の冷徹さとは打って変わり、優しさと心配に満ちていた。エライザの瞳には、まだ森での出来事が焼き付いているようだった。しかし、バッシュの温かい声と、彼の差し伸べられた手を感じ、彼女の意識はゆっくりと現実に戻ってきた。


 彼女は、小さく首を横に振り、頷いた。


「…うん…大丈夫…」


 その声はまだ震えていたが、彼女の顔には、バッシュへの深い信頼が浮かんでいた。彼の剣が、彼女を守り抜いてくれたことを、彼女は決して忘れないだろう。

 バッシュは、エライザの顔がまだ恐怖に引きつっているのを見て、彼女の正面に回った。そして、ゆっくりと顔を近づけ、その瞳を真っ直ぐに見つめた。彼の表情は、先ほどまでの戦闘の冷酷さとはまるで違う、優しく、温かい微笑みを湛えていた。


「大丈夫だ…そばにいる。」


 彼の声は、森のざわめきにもかき消されないほど穏やかで、エライザの心にじんわりと染み渡った。彼の言葉と、間近に感じる確かな温もりは、彼女を襲った恐怖の残滓を払拭し、深い安堵感をもたらした。エライザの瞳から、張り詰めていた緊張が溶け、わずかに涙がにじんだ。彼女にとって、この言葉は、何よりも確かな守護だった。


 エライザは、バッシュの優しい微笑みと、心強い言葉に、恐怖で凍りついていた心がゆっくりと溶けていくのを感じた。彼女は何も言わず、ただバッシュの服の裾をギュッと掴んだ。その小さな仕草は、彼への深い信頼と、もう二度と離れたくないという、彼女の無言の決意を表していた。そして、顔には安堵と感謝の微笑みを浮かべ、深く頷いた。


 バッシュは、エライザが落ち着いたのを確認すると、掴まれた裾を感じながら、静かに周囲を見渡した。野盗の死体と、矢を放った者の残した痕跡。この場所に長居すべきではない。バッシュ達の目的は、あくまで首都バリスで情報を集めることだ。


 彼は、エライザの手をそっと握り、ゆっくりと歩き始めた。森の奥へと続く道は、まだ多くの危険を秘めているだろう。しかし、これからは一人ではない。互いに支え合い、困難を乗り越えていく覚悟が、二人の間には確かにあった。


 バッシュとエライザは、襲撃を受けた森の奥深くを歩き続けた。エライザは、まだ少し震える手でバッシュの服の裾を掴んでいたが、彼の隣にいることで、次第に落ち着きを取り戻しつつあった。彼女の胸元のペンダントは、もう光を放ってはいないが、その存在は確かに彼女を守っているかのようだった。


 バッシュは、周囲を警戒しながらも、森の出口へと続く道を急いだ。あの矢を放った者の気配は完全に消え去っていたが、いつ再び現れるか分からない。この危険な森を早く抜け出し、安全な場所へ移動する必要があった。


 しばらく歩くと、木々の間からわずかに光が差し込み始めた。森の出口が近いことを示す光景に、二人の顔に安堵の表情が浮かんだ。しかし、気を緩めるにはまだ早い。


 バッシュとエライザは、木々の間から差し込む光を目指して歩き続けた。やがて、鬱蒼とした森の木々が途切れ、目の前には広々とした街道が広がった。森の薄暗闇から解放され、開けた視界に二人の表情には安堵の色が浮かんだ。街道は砂利で舗装され、ところどころに馬車のわだちが残っている。遠くには、かすかに人の姿も見える。森の奥で感じた緊張が、少しだけ和らいだ。


「ここからなら、もう少し早く進めるだろう。」


 バッシュは、エライザにそう告げた。野盗の襲撃と謎の狙撃によって緊張感が高まっていたが、街道に出たことで、ひとまずの安全を確保できた。しかし、あの「甘い香り」と「金の耳飾り」の人物が、まだ彼らを追っている可能性は捨てきれない。

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