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key〜光の先へ〜  作者: 初 未来
第1章 旅立ち、世界へ

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第1章 (13)旅支度

 エライザの決意を受け、バッシュの心はより一層固まった。二人の旅は、ここから本格的に始まる。


「町へ出るぞ。動く前に支度を整えておこう。」


 バッシュは、エライザにそう告げた。彼女の服は、森での過酷な状況とグリフォンに襲われた時の傷によって、ところどころ破れ、すっかりくたびれている。ましてや、あの森での追跡を考えれば、目立つローブ姿は避けたいところだろう。


「エライザの服も見ておこう。」


 バッシュの言葉に、エライザは少し驚いた表情を見せたが、すぐに小さく頷いた。彼女一人では、この宿場町で適切な服を選ぶのも難しいだろう。バッシュは、彼女が旅の道中で、少しでも快適に、そして安全に過ごせるように配慮した。


 二人は宿を出て、宿場町ゲーテの賑やかな通りへと繰り出した。活気あふれる市場には、様々な店が軒を連ね、旅の支度にはうってつけの場所だった。


 バッシュとエライザは、宿場町ゲーテの通りを歩き、やがて一軒の服屋の前にたどり着いた。軒先には様々な布地が吊るされ、中からはミシンを踏む音や、客と店主の話し声が聞こえてくる。


「エライザ、どんなのがいい?」


 バッシュはそう尋ねながら、店内の服を見回した。旅の装束としては、動きやすく丈夫なものが良いだろう。彼の脳裏には、動きやすい機能性だけの服が浮かんだが、同時にエライザの好みや、これからの旅の状況も考慮する必要があった。そもそも女性の服なんて全く分からない。エルフである彼女には、人間とは異なる美意識があるかもしれない。


 エライザは、店内に並べられた色とりどりの服を見て、目を輝かせた。里が滅びて以来、衣類に気を配る余裕などなかったからだ。彼女はしばらく品定めするように店内を歩き、やがていくつかの服に視線を留めた。


 エライザは、バッシュの視線を気にしつつも、店内で目を引いた数点の服を試着室へと持ち込んだ。そしてしばらくして、新たな装いに身を包んだ彼女が姿を現した。


 彼女が選んだのは、森の色を思わせる深緑のチュニックだった。体にフィットしつつも動きを妨げないデザインで、裾にはエルフらしい繊細な刺繍が施されている。それに合わせたのは、同系色の短めのスカートと、その下に履かれた強度のあるロングタイツ。そして、肩から羽織った軽めのマントが、彼女の華奢な体を覆い、神秘的な雰囲気を醸し出していた。全体的に、以前の破れたローブとは全く異なる、軽やかで実用性を兼ね備えた旅装だった。


「どう…かしら?」


 エライザは少し恥ずかしそうに、しかし、どこか誇らしげな様子でバッシュに尋ねた。その姿は、痛ましい過去を背負いながらも、新たな旅路へと踏み出す決意を秘めた、一人のエルフの冒険者としての出発を予感させた。


 バッシュは、新しい装いに身を包んだエライザの姿に、思わず目を奪われた。深緑のチュニックとスカート、ロングタイツ、そして軽やかなマントが、彼女のエルフとしての優雅さを際立たせ、同時に活動的な印象を与えている。その姿は、森で倒れていた時の痛々しい面影を完全に消し去っていた。


 彼は、一瞬、我を忘れて見とれていた。そして、はっと我に返り、少し慌てたように言葉を続けた。


「綺麗だ……」


 その言葉は、彼の偽らざる本音だった。すぐに彼は照れたように言い直した。


「…え?」


「いや、似合ってるよ。」


 バッシュの素直な言葉に、エライザはふわりと微笑んだ。その顔には、新しい服を着た喜びと、彼の言葉への感謝が入り混じっていた。彼女の瞳は、里を出て以来、初めて見るような輝きを放っていた。


 エライザは、新しい深緑のチュニックの裾をそっと撫でながら、はにかんだように言った。


「私、巫女の服着てることが多かったから…こういうのあまり着てなくて…」


 その言葉には、巫女の娘として育った彼女の過去が垣間見えた。華やかさよりも神聖さや儀式性が重んじられたであろう巫女の服は、動きやすさや実用性、装飾の好みなどとは無縁だったに違いない。彼女にとって、この新しい旅装は、単なる衣類ではなく、故郷を離れ、新たな人生を歩み始めたことの象徴でもあった。


 バッシュは、エライザの言葉に静かに頷いた。彼女が経験してきた世界の狭さを理解し、同時に、彼女がこれから目にするであろう広大な世界への期待を共有しようとしていた。


 エライザの新しい装いに満足し、バッシュは残りの旅の準備について考えた。


「後は食料と水くらいか…」


 彼はそう呟き、宿場町の市場の方向へと目を向けた。この先の森や道中では、すぐに食料や水が手に入るとは限らない。万全の準備をしておくに越したことはないだろう。



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