なんだこりゃ共和国
大昔に書いてる途中で設定もりもりにして、続けられなくなった奴のリメイクです。
ランドリア共和国――通称“エミリア大陸ののどかなオチ担当”。
この国は、大陸の西の果てにある、森と海に囲まれた平和ボケ気味の豊かな国である。
いちおう“共和国”なんてカッコいい名前がついているが、実際の政治は、王様(気さく)、冒険者ギルドマスター(ムキムキ)、**商業ギルドマスター(小太り)**の三人で仲良くお茶を飲みながら決めていた。
三人ともだいたい趣味は「将棋」と「釣り」で、話が逸れるとすぐクエストの話からアジの干物の話にすり替わるのが特徴である。
さてそんなランドリア共和国、国は平和だが森と海は全然平和じゃない。
森の中には、Bランクの冒険者が3人がかりで挑んでも返り討ちにあうような巨大怪獣がゴロゴロしており、かと思えば、村の子どもが草むらでラビット族を一撃で倒して晩ごはんにするなんてこともある。
つまりこの国、自然のテンションがおかしい。
海もまたヤバい。
浅瀬で釣れる魚は子どもでもラクラク釣れるのに、沖に行くと唐突に**“世界終わりそう”なレベルの海獣**が現れる。Aランク?Sランク?そのへんの区分けを吹き飛ばす“天災級”のモンスターが「今日の昼は船を割ろうかな」みたいな顔して泳いでいる。
ちなみに陸路はどうかと言うと――
「草木一本生えてません!!!」
約400年前の戦争で、国家同士が「草木も生やすな!」という意志で荒野を焼き尽くした結果、未だに何も生えてこない。
というわけで、陸の道は干からび、海は危険すぎ、森はカオス、という三拍子そろったこの国は、逆に**「誰も侵略しない理想の国」**として地味に信頼されていた。
その結果、各国からは「最後の希望の国」「あそこにだけは迷惑かけないでおこう」などと優しい異名で呼ばれ、ランドリアは建国以来、なんと一度も侵略されたことがないという、ある意味ファンタジーを突き抜けた現実を誇っている。
――だが、国内が平和というわけではなかった。
自然の“ゆるさとハードさの落差”が尋常じゃないせいで、森の境界にある村々では日々、冒険者ギルドに依頼が殺到していた。
とくに有名なのが、この村。
その名も、
《ノール・ランドリア》。
通称――**“腕試しの村”**である。
この村、宿屋がうまい飯を出すことでも有名だが、もっと有名なのが――
クエスト達成率100%という伝説の記録である。
「……嘘だろ……」
クエスト掲示板の前で、ぶ厚い首筋と鋼のような腕を持つ男――ヤム・ゴードナーが、紙を持ったまま固まっていた。
彼のような見た目の男が“固まる”という状況は、村の誰にとっても一種の天変地異である。
なぜ固まっているかというと、手に取ったクエストがこちら:
【討伐対象】:森に出没する“アングリーボア”(超不機嫌な猪)
【報酬】:400ランドリア銀貨+猪肉パック(ギルド卸し肉)
【備考】:絵付き情報(作者:カサンドラ)
※位置情報、周辺環境、猪の好物、昨日食べていたもののメモなどが添付されている。
「いや、情報多すぎるだろコレ!!」
思わずクエスト用紙を握りつぶしそうになる。
近くにいたギルド職員が苦笑しながら小声で言う。
「それ、カサンドラ嬢の情報つきクエストですんで……ご安心ください。ええ。ほぼ迷子にはなりませんし、相手がどの方向に怒っているかまで描いてあるんです」
「“怒りの方向”ってなんだよ!!!???」
もはや討伐というより、**“ピクニック+クイズ大会”**である。
ちなみに、後ろで聞いていた村の子供たちがひそひそ話す。
「新しいお客さん、また“初見カサンドラ”で混乱してるー」
「うんうん、よくあるー。“何だこのクエスト!?”って絶対言うよね~」
「3、2、1――」
「なんっだこりゃぁあああ!!??」
\正解~!/
こうして、今日もノール・ランドリアの朝は、驚きとツッコミで始まるのであった――。