第一章: 賑やかなタウンとジョーカーの決意
リセスタウン――ボードゲームやカードゲームのキャラクターたちが集う街。広場では住人たちの声が響き渡り、街全体がまるで一つのゲームのように賑やかだった。
時計塔が正午を告げると、スゴロク・ゴローが勢いよく声を張り上げた。
「これで俺のサイコロ運が最強だって証明されたな!」
彼は胸を張り、片手に握ったサイコロを見せびらかしている。その顔は、いかにも勝者らしい自信に満ちていた。ゴローの髪はボリュームのある茶色で、額からしっかりと整えられた髪の毛が流れるように伸び、サイコロ模様のネクタイを締めている。
「運だけじゃなくて実力も見せてよね!」
小柄な少女、ダイヤモンドゲーム・ディアが不満げに返す。彼女の髪はまるで宝石のように輝くピンク色で、シルバーの装飾が施されたドレスにはダイヤモンドのような模様が散りばめられている。彼女の笑顔には一種の華やかさと、冷徹な一面が同居している。
広場の片隅で彼らを見守るのは、オセロ・コール。黒と白の髪が真ん中でくっきりと分かれ、左右で対照的に色が分かれている。彼の髪はまるで、オセロの石のように鮮やかに輝いていた。オセロは冷静で理知的な印象を与える青年で、身に着けているのは白黒の色合いでまとめられたシンプルでありながら高級感のある衣装。彼の目元は厳しく、深い思索にふけっているようだった。
「また騒がしいな……」
オセロが呟くと、ジョーカーが反応した。
ジョーカーは、赤と黒の衣装に身を包み、胸にはトランプのジョーカーを象徴するエンブレムをつけた男だ。その衣装は華やかでありながら、どこか不安定さを感じさせるデザイン。ジョーカーの顔には常にちょっとした悪戯心が見え隠れし、笑いかけることで誰もが彼に引き込まれるが、目の奥には少しの哀愁が漂っている。彼の髪は黒と赤のストライプのように見え、形を変えて髪の端にまるでカードのようにフリルがついている。
「ジョーカー、どうしたんだ?」
オセロが歩み寄り、声をかけた。
ジョーカーは手元のカードを器用に回しながら、溜息をついた。
「いやさ、みんな楽しそうにしてるけど……どうにも満たされねぇんだよ。」
「満たされない?」
オセロが不思議そうに首をかしげると、ジョーカーは遠くを見つめるように答えた。
「昔のことを思い出してたんだよ。家族や友達が俺たちを囲んでさ……笑い声が響いてた、あの頃をな。」
その声には、かつての栄光を懐かしむ気持ちがにじんでいた。
そこへ、遠くから年老いた声が響いた。
「贅沢言うんじゃねえ!」
ジョーカーが驚いて振り向くと、杖をついた年配の男が歩み寄ってきた。その名はモクバ爺さん――古代エジプト発祥のゲーム、セネトを模したキャラクターだった。彼の衣装は年季が入り、どこか時代を感じさせるものだった。彼の髪は白髪で、細かく編み込まれた編み込みがまるでセネトのボード上に並んだ石のようだった。杖にはセネトのゲーム盤の模様が彫られ、爺さんの姿勢はまるでそのボードの上での勝負に挑んでいるかのようだった。
「お主らはまだいいほうじゃ!!人間たちに遊んでもらえるだけでも幸せじゃろうが!」
モクバ爺さんの怒鳴り声に、ジョーカーは困惑した表情を浮かべる。
「いや、爺さん……俺たちもそんなに遊ばれてるわけじゃ……」
「甘ったれるな!」
モクバ爺さんが杖を振り上げた。
「ワシなんか何百年も埃をかぶったままなんじゃぞ!それに比べりゃ、お前たちのほうがどれだけマシか!」
「で、でも……俺たちはもっとみんなに笑顔を届けたいだけで……」
ジョーカーが言い訳を試みるが、モクバ爺さんはさらに畳みかける。
「ワシを見ろ!今じゃ博物館の片隅で、『古代の暇つぶし』って説明書きされるだけなんじゃぞ!それでも文句言わずに耐えておる!」
その話に、スゴロク・ゴローとディアも顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。
「なんか……ジョーカー、説教されてるね。」
「まあ、モクバ爺さんの言うことも一理あるけど……ちょっときついかも?」
モクバ爺さんの熱弁が続く中、ジョーカーは苦笑いを浮かべながら心の中で誓った。
(だからこそ、俺たちは変わらなきゃいけねぇんだよ!)
そして彼はついに、モクバ爺さんの話を遮るように立ち上がった。
「でもさ、爺さん!俺たちは、もっと遊ばれるべきなんだ!もっとみんなに笑顔を届けられるはずだろ?」
その言葉に、広場全体が静まり返った。そして、ふと笑い声が聞こえた。
「面白いこと言うじゃないか、ジョーカー!」
ディアが楽しそうに声を上げ、ゴローも同調するように拳を握りしめた。
「よっしゃ、俺も乗った!人間界でサイコロ振りまくってやるぜ!」
「計画次第だが、悪くない提案だ。」
オセロも静かに賛意を示し、住人たちがざわめき出した。
こうして、ジョーカーたちは人間界への冒険を決意する。かつての輝きを取り戻し、新たな価値を見つけるための旅が今、幕を開ける――。