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004

投 宮部 裕太 1年 ユータ

  右投右打 176cm 65kg

捕 早乙女 颯 2年 ウー先輩

  右投右打 177cm 78kg

一 小林  賢 2年 コバケン先輩

  右投右打 169cm 70kg

二 土屋 春馬 1年 ツッチー

  右投左打 162cm 49kg

三 馬渡  彰 1年 アッくん

  右投右打 182cm 71kg

遊 織田 光成 1年 ミッチー

  右投左打 161cm 48kg

マ 咲良 小春 2年 コハル先輩  159cm

マ 望月 秋葉 1年 アキバちゃん 152cm

サ 七瀬 千夏 中2 147cm

 俺たちは話し合った。

 部員の確保、来年の大会、誰が主将(キャプテン)を務めるか、監督を誰にお願いするか――等々。


 とりあえずの野球部活動は縁起良く年明け1月1日から。

 主将(キャプテン)はウー先輩、副主将(ふくキャプテン)はコバケン先輩。

 監督は冬休み明けの新学期になってから職員室に全員で乗り込むことに決まった。


 ウー先輩、コバケン先輩の同級生、つまり次の3年生に中学で野球部だった人はいないらしい。

 それに、来年、再来年のことを考えると、俺たちの同級生から勧誘した方が良いという話で全員納得した。


「俺たちの世代で野球やってたやつ知ってるか?」


 アッくんが訊ねるが、ツッチーもミッチーも首を横に振る。

 俺の記憶には、野球経験者はもちろん当時同じクラスだったやつすら残っていないし、高校卒業まで何をやっても過ごしていたかも覚えていない。

 改めて約20年という時の流れを感じると同時に、俺の高校生活がいかに灰色で塗り潰されていたのかと悲しくなる。

 しかし、ネガティブになっていても何も解決しない。

 過去を変えるため、ここは奮起する他ないのだ。


「悩んでいてもダラダラと時間が過ぎるだけだ。新学期が始まったら片っ端から声をかけてみるしかない。上手くいかなかったら、それから上手くいく方法を考えよう」


 考えるばかりで行動しない、あるいは出来ない理由を並べて行動しないということは現状維持ですらなく後退だ。

 社会に出てみると、そういう大人が大半であることに気付く。


 俺もその1人だったのかもしれない。

 いつでも実家に帰ることはできたのに、唯一の肉親が亡くなるまで孝行することをしなかった。

 年に一度でも顔を見に行くことすらしなかった。

 仕事もプライベートも充実しないまま、自己肯定感の欠片もない人生をダラダラと送っていた。


 今は違う。

 どういうわけか過去に戻ってきた。

 ここで何も成すことができなければ、またあの未来が待っている。

 それだけは避けたい。


「目先の目標は、最低でも部員を3人確保すること。みんなで協力して絶対仲間を集めよう」


 俺の言葉に、真っ直ぐな目で全員頷いてくれた。


「裕太くん、ちょっと大人っぽくなりましたね。エースの風格が出てきました」


 アキバちゃんが感心している。

 実際は中年のオッサン故の落ち着いた雰囲気が大人っぽく感じるのかもしれない。


「やろうぜ、ユータ! 先輩たちの最後の夏のためにも、絶対野球部復活させるぞ!」


 アッくんの言葉には惹きつけられる何かがあった。

 俺たちの世代の牽引役は間違いなくアッくんだろう。

 普通科しかない田舎の高校でなければ、それこそ甲子園を目指せるようなチームを引っ張る選手になっていたと思う。

 それほどに、アッくんにはカリスマ性があった。


「盛り上がってるとこで悪いけど。ユータ、そろそろ聞いていいか?」


 俺、アッくん、アキバちゃんの3人が得体の知れない結束力を味わっている時、ツッチーが口を開いた。

 それに合わせるように、今度はミッチーが言う。


「たぶん俺もツッチーと同じこと考えてると思う」


「だよな、ミッチー」


「どうした? ツッチー、ミッチー」


 2人は俺の隣にいる千夏に目をやり、口を揃えて聞いてきた。


「……もしかして、彼女?」


 ああ、そう言えば千夏のことは何も説明せずしていなかったと今さら思い出す。

 千夏も千夏で、年上の連中ばかりいるからなのか、アレ以来無言を貫いている。


「こいつは彼女の千夏だ。言ってなかったな」


「彼女がいることは別にどうでもいいけど……」


 ツッチーは歯切れの悪い返答をする。


「よく試合とか練習を見に来てくれてた子だろ? 見覚えあるぜ……で、彼女いくつ?」


 ミッチーが何やら申し訳なさそうに訊ねる。

 え、またこの話題かよ……。

 面倒だなと思いながらも、こればっかりは嘘ついても仕方ないので正直に伝える。


「中2だ」


「ユータ、お前……」


「ドン引きしてんじゃねーよ。2コ違いくらい大人になれば誤差だ。それにある程度年齢重ねると同い年で付き合っている方が少数派だ。あと2、3年経てば自然とそれに気がつく」


「すげぇ……よく分からないけどゆーたが大人に見えるぜ……」


 ツッチーとミッチーは顔を見合わせて謎の感動をしている。

 ちなみに、アッくんとアキバちゃんにとっても千夏が俺の彼女であることは初耳なので、俺が弁明している途中は若干引き気味の表情だった。

 何はともあれ、今日、ここに元野球部が全員集まることができた。


「よし! それでは1月1日、野球部復活の祈願が活動開始だ! グラウンドに集合した後は神社まで走って行くぞ!」


「はいッ!」


 ウー先輩の号令を最後にファミレスを出る。

 ここにいる全員の意思が固まった。

 誰も言い出さなかっただけで、みんな野球がやりたくて疼いていたんだ。

 俺がやったことは、千夏に言われるがままウー先輩に連絡をしただけ。

 たったそれだけで、確実に過去は変わった。


 野球がやりたいと思いながら行動に移すことはなく、記憶にすら残らない高校生活を送った現代の俺と、今ここにいる俺は違う未来を辿るだろう。

 まだ何も始まっていないけど、そうであると確信している。

 となるとやっぱり、一度現代にタイムリープして未来がどう変わっているのかを確かめたいよなぁ。

 千夏、キスしてくれるかなぁ。

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