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投 宮部 裕太 1年 ユータ
右投右打 176cm 65kg
捕 早乙女 颯 2年 ウー先輩
右投右打 177cm 78kg
一 小林 賢 2年 コバケン先輩
右投右打 169cm 70kg
二 土屋 春馬 1年 ツッチー
右投左打 162cm 49kg
三 馬渡 彰 1年 アッくん
右投右打 182cm 71kg
遊 織田 光成 1年 ミッチー
右投左打 161cm 48kg
左
中
右
マ 咲良 小春 2年 コハル先輩 159cm
マ 望月 秋葉 1年 アキバちゃん 152cm
サ 七瀬 千夏 中2 147cm
高校のグラウンドに到着する。
おれが一番乗りだった。
暖かい日差しを浴びて深呼吸をすると、自転車を漕いで熱くなった体内から白い息が漏れ出る。
心地良い、最高の昼だ。
グラウンドとは言ったものの、所詮は田舎の県立高校の運動場だ。
しかし、それでも球児にとっては神聖な場所であることは間違いない。
一礼して一歩踏み入る。
今朝、母さんに貰ったランニングシューズの裏で、土の感触を確かめると、忘れていた何かが込み上げてくる。
「オッス!」
後方の声に振り向くと、アッくんが立っていた。
男の俺から見ても、この高身長イケメンはスポーツウェアに野球帽がよく似合っている。
しかも野球センス抜群なのだから、憎いを通り越して憧れさえ覚える。
「30分前に着いちまったと思ったらユータも同じだったか」
「うん。アッくんも早いな」
そこから数分も経たないうちに、続々と仲間が集まり始める。
「うぃーす。アッくん、ユータ」
声を揃えてやって来たのはツッチーとミッチーの俊足二遊間コンビ。
「はっはっは! 俺だけじゃなくやっぱお前らも早かったか!」
筋肉ゴリラこと主将のウー先輩。
「やっぱり集合時間より早かったですね。きっと皆さんお昼もろくに食べていないと思って、コハル先輩とおにぎり作ってきましたよ」
「食べて」
ラップに包まれた海苔おにぎりを持って、マネージャーのコハル先輩とアキバちゃんもやって来た。
コハル先輩の声は相変わらず小さくて、耳を澄まさないと聞こえにくい。
「これはありがたい! お前ら昼飯は食ってきたか?」
ウー先輩の問いに、全員が首を横に振る。
かく言う俺も、早くグラウンドに向かいたい一心で、昼飯は食べていなかった。
俺と同じで、みんな同じように野球部活動が待ち遠しかったのだ。
誰かの、というか全員の腹が鳴る音がする。
高校生男子、高校球児にとって、おにぎりが垂涎の的であることは否めない。
コハル先輩とアキバちゃんの手元に目を惹きつけられていると、遠くで声が聞こえてくる。
「遅くなってごめぇーん!」
大きな体を揺らしながら、コバケン先輩が走ってきた。
「朝からお餅食べ過ぎちゃってさぁ!」
コバケン先輩の走る姿に、俺たちは顔を見合わせてクスリと笑う。
「大丈夫だ! まだ集合時間にはなってないぞ!」
ウー先輩の声にコバケン先輩は安心したようににっこり笑い、そしてマネージャー2人が持つおにぎりを見つけると、我先にと手に取るのだった。
「コバケン! さっき餅食い過ぎたって言ってただろ?」
「おにぎりは別腹だよぉウータン」
2年生コンビのやりとりに、その他全員は苦笑いだった。
さて、腹を満たした俺たち野球部6人とマネージャー2人を合わせた計8人は、主将であるウー先輩を中心に半円を組む。
時刻はちょうど集合時間である13時になったばかりだ。
「みんなよく集まってくれた! 今日から活動再開だ! 不甲斐ない主将だが、これから夏までよろしく頼む!」
「はいッ!」
「まずは選手6人、マネージャー2人からのスタートだが、冬休みが明けたら部員を勧誘して新チームを作ろう!」
「はいッ!」
「よし、いい返事だ……全員走るぞ!」
ウー先輩の号令を合図に、俺たちは走り出す。
神社まで走って30分はかかるだろうが、ペース配分なんて考える余裕もなく、全員笑いながら全力疾走だった。
みんな、早く体を動かしたくて仕方ないんだ。
マネージャーの2人も後ろから自転車で着いてくる。
白い息を吐きながら、体と心を熱くして、俺たち野球部の活動がスタートした。
神社に着いた時には、みんな息を切らしていたが、しかし全員表情は明るい。
田舎の小さな神社とは言っても初詣に来ている人は多い――まあ、よくある正月の風景である。
俺たちは野球部復活を胸に神頼みをして、学校に向かって再び走り出した。
冬空の下、じわりとした気持ちのいい汗がアンダーシャツに染みる。
グラウンドに着く頃には十分に体は温まっている。
「よーし、キャッチボールだ!」
「よっしゃー!」
ウー先輩の号令に、全員が少年のように飛び跳ねる。
ボールを投げて、ボールを捕る。
ただそれだけなのに、野球小僧たちにはそれが楽しくて仕方がないのだ。
ウー先輩とコバケン先輩。
ツッチーとミッチー。
アッくんと俺。
笑いながら、何かを思い出しながら、これからのことを考えながら、疲れて腕が上がらなくなるまで、マネージャーの2人が呆れて座り込むまで、俺たちはキャッチボールを続けるのだった。




