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002

投 宮部 裕太 1年 ユータ

  右投右打 176cm 65kg

捕 早乙女 颯 2年 ウー先輩

  右投右打 177cm 78kg

一 小林  賢 2年 コバケン先輩

  右投右打 169cm 70kg

二 土屋 春馬 1年 ツッチー

  右投左打 162cm 49kg

三 馬渡  彰 1年 アッくん

  右投右打 182cm 71kg

遊 織田 光成 1年 ミッチー

  右投左打 161cm 48kg

マ 咲良 小春 2年 コハル先輩  159cm

マ 望月 秋葉 1年 アキバちゃん 152cm

サ 七瀬 千夏 中2 147cm

 俺が通う鹿堂(ろくどう)高校は、進学校といえば聞こえはいいが、普通科しかないただの田舎の県立高校だ。

 中学でそこそこ勉強できたやつが集まる学校といった感じで、ガチで頭のいいやつは私立の高校を受験する。

 とは言え一応進学校なので、スポーツよりは勉強に力を入れている高校であることは間違いない。

 そういう高校に、俺は通っている――のだが。


「よっしゃユータ! 私がここまでお膳立てしてやったんだ、絶対甲子園に連れて行ってくれよな!」


 千夏はあのマウンドとバッティングネットを俺に見せて以来、鼻高々に擦り寄ってくる。

 今までスルーしていたが、正直言って甲子園を目指すとなると、難易度は相当高い。

 練習の設備は強豪校とは比べ物にならないし、練習時間や選手のポテンシャルだって違う――と、ガキの頃の俺なら出来ない言い訳を並べていたかもしれないな。


「千夏、聞いてくれ」


「お、なんだなんだ? ユータのためなら何だって手伝うに決まってるだろ!」


「俺のためにいろいろサポートしてくれて、本当にありがとう。こんな彼女がいて俺は幸せ者だ」


「だろー? 浮気とかしたらマジで許さないからな?」


 気の強そうなキツネ顔の千夏は、切れ長の目を細くしてニコニコ笑っている。

 過去が変わる前、現代の千夏がクリスマスの日に別れたと言った理由が分かった気がする。


 千夏が俺のために作ってくれた練習設備は、数日やそこらで準備出来るものじゃない。

 今日、お年玉という名目でプレゼントするつもりで、だいぶ前から準備してくれていたに違いない。

 それなのに、過去の俺は野球を続けることを諦めてしまっていて……そんな俺に、千夏は愛想を尽かしたのだろう。


「お前を泣かせるようなことは絶対しない。だから、ずっと俺のそばにいて、見守っていてくれ」


 必ず、未来を変えてみせるから。


「ふーん。まったく、ユータは私がいないとダメだなー」


「ああ、千夏がいないとダメになっちまう」


 俺と千夏は微笑み合う。

 言葉にできない信頼関係が、俺たちを固く繋いでいる。


「……雰囲気的にぎゅって抱きしめるところだろ」


 千夏が可愛く睨む。

 まあ、そういう流れなのは百も承知なんだけど。


「そうしようと思ったけど、時間……大丈夫かなと思って」


 あと30分後には家を出ないと集合時間に間に合わない。


「……まだ時間あるし」


「いや、そしたら長くなるし」


「長くなるのはユータが暴走するからだろ!?」


「そうなの?」


「自覚ないのかよ!? まあいいけど……野球も頑張ってほしいし、私との時間も大事にしてほしい」


 不貞腐れたようでもあり、恥ずかしそうでもある表情で千夏はそっぽを向いた。

 さっきの言葉が本心であるのは今までの言動から感じ取れる。

 俺が野球をやることは全力で応援してくれているし、そうでない時間は構って欲しいという感情もあるのだろう。


「それじゃあ、お楽しみは取っておくか」


「もうちょっと言い方考えろよな!?」


 その後、一度は落ち着いた千夏だったが、今度は練習に着いて行くと言い出して駄々をこね始めた。

 野球部活動一発目は神社まで走って行くことが決まっているため正直練習の足手まといになる。


「私がユータのサポートしたらダメなの?」


「それは本当に感謝してる。最高の練習設備まで準備してくれたしな」


「でも一緒に練習行っちゃダメなんでしょ? マネージャーの女たちはいいのに、私はダメ?」


「うーん、それ言われると困るけど……」


「私は子どもだから邪魔? 高校の女ならいいの? 私だって練習の手伝いくらいできるのに」


 千夏が言いたいことは何となく理解できるが、さすがに部外者の中学生を連れて行くとなると他の人たちは俺のことを良くは思わないだろう。


 野球部復活を誘っておきながら、彼女連れで行ったら本気度が伝わらないよな……。

 しかし、見た目どおり普段は強気な千夏だが、今は俯いて気を病んでいる様子だ。

 自分が中学生だから、俺たち高校生のサポートができないことを悔しくてたまらないのかもしれない。


 俺が返答に困っていると、このクソガキは腹を抱えてクスクス笑い始めた。


「なーんつって。どうだった? めんどくさい女のモノマネ」


「……へ?」


「もしかして本気にしちゃったとか? マジウケる。ユータもチョロいなー。私が嘘泣きでもしたら超あたふたしそう」


「このヤロー、本気で心配したのに!」


「あはは! ごめーん!」


 少しでも心配した俺が馬鹿だった。

 やっぱりこいつは見た目どおりのクソガキだ。

 俺は心を弄ばれたのが悔しくて、仕返しに押し倒して脇腹をくすぐってやった。


「いやーん。許してー」


「そんな棒読みで言われて許すわけないだろ!」


 側から見るとバカップルがイチャイチャしているだけに見えるかもしれない。

 千夏は笑いながらグッと俺の腕を抱きしめて、耳元で小さく囁いた。


「ほんとはね、ユータに構って欲しかっただけ」


「なんだよ急に。ちょっと可愛く言ったからって許さないぞ」


「野球はもちろん頑張ってほしいけど、こういう2人の時間が少なくなるんだなーって思ったら寂しくなったんだよ! それくらい分かれよ! 悪かったな! めんどくさい彼女でよ!」


「……もしかして、怒ってる?」


「怒ってる。ユータがぎゅってしてくれなかったから」


 あー、そういうことか。

 集合時間までの時間がないとか言って、抱きしめなかったことに腹を立てていたのか。

 回りくどいと言うか何と言うか……。


「はい、これでいいか?」


 俺は優しく千夏を抱きしめる。

 千夏も俺の腰に腕を回してそれに応える。


「早くやれよバカ……」


 憎まれ口を叩きながら、満足したのか千夏は離れ、俺の胸をドンと押した。


「よし、練習頑張ってこい! 帰ってきたら私の相手しろよ!?」


「おう。待ってる間、冬休みの宿題でもしてろ」


「……宿題、手伝って?」


「勉強はちゃんと自分でやれ」


「えーん! こんな時ばっか怒るのズルいー!」


 泣き縋る千夏を置いて俺は練習に向かう。

 これは完全に嘘泣きだと分かるからな。

 何はともあれ、本当の意味で過去を変える第一歩はこれからだ。


 自転車に乗って走り出す。

 時刻は12時15分。

 高校のグラウンドまで15分程度。

 集合時間の13時まで余裕はあるが、もう待てない。

 昼飯を食べている時間すらもったいない。

 野球が俺を呼んでいる。

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