支配するマスキングテープ
俺は今、このマスキングテープに支配されている。こいつを引っ張り出すと、薄い花柄の上に俺への指示が黒い文字で浮かび上がる。
指示に従わなかったせいで、俺はすでに嗅覚と味覚を失った。
「くそっ!お前、マスキングテープのくせに指図してくんじゃねーよ!!」
握り潰すなり燃やすなりしてやろうと思ったが、やめた。
五感を失わせる力がこいつにはあるんだ。
何をされるか分からない。
今回の指示は、「総理大臣を暗殺せよ。」
…は?ふざけてる。いや、狂っている。
あり得ないほど身体が震えている。冷たい汗が背筋を伝った。
やるしかなかった。俺は拳銃をむける。
震える指を引き金にかける。深呼吸して、一気に引き金を引いた。
《バーーーーーーン!!!》
これで、良かったんだ。
俺は俺自身で残りの五感を消した。