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【3-2】心の距離





「もう、恥ずかしすぎる!」




ミアは自宅の中で、

誰にも聞かれないことを確認しながら、

顔を両手で覆って叫んでいた。






頭の中で昨日の出来事が何度も繰り返され、

そのたびに彼女の頬は再び熱を帯びた。





心臓の高鳴りがまだ収まらない。






アレンの前であんな風に自分の気持ちをさらけ出してしまったのが信じられなかった。





あの瞬間、自分がどれだけ赤くなっていたかを思い出すだけで、恥ずかしさが全身に広がる。








「なんであんなこと言っちゃったんだろう…!」






彼の優しさに触れるたび、

いつの間にか惹かれていたことを認めざるを得なくなっていた自分。





それでも、直接言葉にしてしまったことは、

自分でも驚きだった。








ミアはベッドに腰掛け、


膝に顔をうずめながら、

自分の無防備さに呆れるばかりだった。




 




「次、どうやって顔を合わせればいいんだろう…」







内心では今後の自分の振る舞いが心配でたまらなかったが、何とか冷静に装ってやり過ごそうと決意した。









翌日、


アレンと再び顔を合わせる瞬間がやってきた。







彼は変わらず穏やかで、


昨日の出来事など忘れたかのように、

いつも通りに接してくれていた。





その落ち着いた態度が、

逆にミアの心をざわつかせた。





彼の前では平然を装っていたが、

内心では胸の鼓動が速く、


彼が一つ言葉を発するたびにそれが自分の過ちを指摘されているような気分だった。



 


アレン「おはようございます、ミアさん。」





アレンの爽やかな声が響き、

彼の青い瞳が優しくミアを見つめる。


 



彼の表情には微塵も先日のことに対する戸惑いや緊張は見えなかった。






彼の自然な笑顔を見て、 


ミアは少しだけ安心し、

何とか平静を装って返事をする。






ミア「お、おはようございます…!」





ミアの声はわずかに震えていたが、

何とか笑顔を作ってみせた。




けれども、心の中はまだ動揺している。







アレンが何も気にしていない様子に、

ミアはさらに自分の態度が浮いているような気がして、余計に恥ずかしくなった。






「気にしないで、

普通に接しようって思ったはずなのに…」


そう心の中で何度も繰り返すミアだが、

アレンの一挙一動に意識が向いてしまう。








アレンはそのまま普段通りに軽く雑談を交わし、

特別なことは何もないかのように振る舞った。





彼の落ち着いた態度に触れるたび、

ミアの緊張も少しずつ解けていく。






アレンが気にしていないのなら、

きっと自分も大丈夫だ、と何とか自分に言い聞かせ、

平常心を保とうと努めた。












数日が経ち、

騎士団の調査もいよいよ最終段階に入った。






瘴気の痕跡は確かに存在していたが、


森自体には異常は見当たらず、アレンたちはこの地から引き上げる準備を進めていた。





出発を前に、アレンはミアに最後の挨拶をするために彼女の家を訪ねることにした。






アレン「ミアさん、明日には城に戻ることになりました。しばらくの間、お世話になりました。」








アレンの声には、

感謝の気持ちと共に、

わずかな寂しさが混じっていた。






これまでの数日間、

彼らが共に過ごした時間の重みが、 

さりげないその一言に凝縮されていた。








ミアはその言葉に心が揺れたが、

笑顔を浮かべながら 



「こちらこそ、ありがとうございました。あまりお役に立てたことはないですが、調査が無事に終わってよかったです」と答えた。




しかしその声はどこかぎこちなく、

別れが近づくことに対する名残惜しさが微かに感じられた。

 








アレンとミアが一瞬視線を交わす。






二人の間に流れる静かな緊張感が、

言葉にできない何かを感じさせたが、

どちらもその想いに触れることはなかった。





どこかぎこちない別れの瞬間であっても、

二人の間には次第に深まっていく感情が静かに存在していた。






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