【2-5】新しい出逢い
数日が過ぎ、
騎士団が森に滞在する間、
ミアは彼らと何度か顔を合わせることがあった。
最初は家の近くで。
ミアが庭で花の手入れをしていると、数人の騎士たちが森を巡っている姿が視界の端に映った。
彼らは調査の途中だったのだろう、
ミアに気づくと軽くお辞儀をした。
ミアもその挨拶に応じ、
深くお辞儀を返す。
「…どうぞ、お構いなく。」ミアはそう言いかけたが、彼らは特に話しかけることもなく、
来た道をそのまま引き返していった。
次に彼らと出会ったのは、
水辺に来たときだった。
ミアがもう溜まって限界だった洗濯をしようと
湖に足を運ぶと、またしても騎士たちの姿があった。
アレンを含む数名の騎士たちが休息しているようで、彼らは馬に水を与えていた。
ミアが近づくと、
アレンが彼女に気づいて立ち上がり、
軽く頭を下げた。
「おはようございます、先日は突然申し訳なかった。あれから困ったことなどなかっただろうか?」
アレンは少し硬い表情だったが、
礼儀正しく声をかけた。
「おはようございます。はい...大丈夫です。」ミアもお辞儀を返しながら、まだどこか緊張している自分に気づいた。
「水辺でのお仕事ですか?」アレンがそう聞くと、
ミアは洗濯物を少し持ち上げて見せた。
「はい、洗濯をしようと思って。」
「なるほど…。
すみません、我々が居るせいで、
お邪魔してしまったかもしれませんね。」
アレンは少し申し訳なさそうに言ったが、
ミアは軽く笑った。
ミア「いえ、ここは誰のものでもありませんから。」
そんな会話が始まり、
短いながらも互いに警戒心が和らぐのを感じた。
またある日、
森の中で果実を集めていたミアは、
再びアレンたちに遭遇した。
騎士たちは森を慎重に探索しつつ、
時折メモを取ったり、
地図を確認したりしていた。
ミアは木々の陰から彼らを眺めていたが、
やがてアレンが彼女に気づき、手を挙げた。
アレン「ミアさん、またお会いしましたね。」
「ええ、偶然ですね。」ミアも微笑んで応じた。
これまでの短い交流を重ねる中で、
ミアの心に少しずつ安心感が芽生えていた。
彼らがこの森に害を与えるつもりはないと、
リディの言葉だけでなく、
自らの目で確かめるように感じていた。
次第に、挨拶だけではなく、
短い世間話を交わすようになっていた。
アレンは時折、街や騎士団の話を少しだけ披露し、
ミアも「そんなことがあるんですね」と興味を持って耳を傾けた。
「この森は本当に綺麗ですね。
これまで調査してきた場所とはまるで違います。」
ある日、アレンがそう言った。
ミアは笑顔で頷いた。
「私もこの森が大好きです。
いつもここにいると安心するんです。」
アレンもその言葉に微笑みを返し、
「森の精霊たちが見守っているのかもしれませんね」
と冗談めかして言った。
ミアは少しだけ驚いた顔を見せたが、
すぐに柔らかい笑みを浮かべた。
「そうかもしれませんね。
精霊たちは優しいですから。」
二人の会話は自然と進み、
最初はお辞儀のみの挨拶から始まった関係が、
今では笑顔で軽い冗談を言い合うほどに進展していた。
その後も何度か顔を合わせることが続き、
騎士たちはミアに対してますます礼儀正しく、
そして親しみを持って接するようになっていった。
ミアも最初の警戒心は薄れ、
彼らが森に害をなすつもりはないと確信していった。
彼女の胸に抱いた不安は、
騎士たちとの日々の交流を通して、
少しずつ溶けていくようだった。




