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エッセイ

お気に入りの場所がとっぴされた…

作者: たかさば

 どうも、どうもどうも。


 ここ数年、毎朝公園に出向いては朝のラジオ体操をしているものです。

 本日は、長年にわたり同じ場所で体を動かし続けてきた者が、思いがけない展開に怯んで…一瞬誤った行動をしそうになってしまったエピソードなどを語ってみようと思いますです。

 よろしければお付き合いくださいな。


 冒頭でもふれたように、私は長年、朝のウォーキング&ラジオ体操をルーティンとしておりまして、晴れている日はほぼほぼ近所にある大きな公園に出向いているんですよ。

 公園には市民の憩いの広場があるんですけど、そこでラジオ体操が放送されていまして…、近隣住民がボチボチ集まっては共に体に血を巡らせていたりしておりましてですね。


 私はあまりコミュニケーションスキルに長けた人間ではないので、多くの人が集まる広場からはちょっと離れた位置にある、ギリギリラジオの音声が聞こえる場所で毎日孤独にラジオ体操をしているんです。

 地味に家族にやけに顔が広い人がいるので、朝もはよから微妙な知人と顔を合わせて気をつかいたくない気持ちが強いと言いますか、やたら距離感の近い人好きな人と縁ができてしまわぬよう自己防衛していると言いますか。


 私がいつもラジオ体操をしているのは、遊具が近くにある芝生の上です。

 ここは池の水の浄水の建物があるので日差しも遮ることができる上に、大きな岩があって荷物(サンバイザーやウエストポーチ、ペットボトル)を置くことができるので、とても都合がよろしい場所でしてね。


 朝のウォーキングをしようと決めて、公園内をはじめて巡って…ラジオ体操の音が聞こえてきて。

 ちょっと体を動かしてみようかと思った時、ちょうど目の前に良さそうな場所があって。

 ポーチを岩の上に置いた、あの時からずっと…、私はこの場所で、ラジオ体操をやり続けてきたのです。


 何度も体を動かし、何度もラジオ体操後に空の様子を写真に撮り、何度も岩を撫で…愛着はかなりあって、一番のお気に入りの場所になっておりましてですね。


 ところがですよ。


 七月某日、いつものように私が岩を目指して歩みを進めておりましたらですよ。


 何やら、違和感のようなものが……?

 ……げえ!!


 私の場所に、誰か…いる!!!


 なんと、いつも私が荷物を置いている場所に足をかけ、丁寧に体を伸ばしている人がいるではありませんか。

 私の、私のお気に入りの岩さんに…土足をのせて、じゃりじゃりと音をたてながら、勢いよく上ったり下りたりしてるんですけど?!

 なんという失敬な、なんという無礼な、なんという図々しい、なんという、なんという……!!!


 とても岩に荷物を置くことは…いつもの場所で体を動かすことはできないことを悟った私はですね。

 すごすごと…前に進むことしかできませんでしてね。

 少々離れたベンチの前…真夏の日差しを浴びてぬるくはなっているがどこか冷たさを感じずにはおられないコンクリートの上で、ラジオ体操をすることになりましてですね。


 で……、次の日に岩さんのところに行ってみたらですよ。


 今日も…岩さんを足蹴にする人がいる!!!


 でもって、次の日も、その次の日もですね。


 ………。


 あかん、完全に、私の場所……()()()された………。


 私と岩の長きにわたるお付き合いを何も知らないであろう、ぽっと出のたまたま通りすがっただけのイチ市民が、私の場所、私のお気に入りの場所をおおおおおお!!!


 岩さんの前を通りかかるたびに一言モノ申してやろうかという気になるのですが…、いやそれはマズいだろうと我に返り、涙を飲みのみ別の場所でラジオ体操をしている次第でしてね。


 ああ、別れというものは…実に突然に訪れるものなのだ…。

 あれほどまでに毎日相対していた岩が、こんなにも遠くなる日がやってこようとは……。


 感傷に浸りつつ、お気に入りと成りうる場所を探しながら公園内をうろついて模索しているわけなのですけれども。


 もしかしたら……、私も、かつては誰かのお気に入りの場所を奪った側なのかもしれないのだとですね?!


 そんな事を思いながら、今朝も公園の片隅でラジオ体操をしてきた人がいるというお話でした……。

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