ティーネの悩み相談
日が昇り、二時間くらい経った頃、祈りを捧げに教会へ行く。祈り終わったら次に修道院へ行き、様々なことを学ぶ。普通は寮に入り生活しなくてはならないがお金が足りなくそれが無理であった。成績が優秀な者は外での暮らしも許可してくれるとの事で優秀な成績を保つため日々精進している。
昼くらいに終わりそこから仕事場である酒場へ行き働く。
仕事場へ行く途中、壁一面に指名手配書が貼り付けられていた。昨日は無かったので今日貼られたものだろう。内容は私が今匿っているサエギさんのようだ。
この国で一番の酒場であるここは、朝早くから日をまたいで夜が明ける前までやっている。
店の裏から入り、更衣室へ行くと先客がいた。
「お疲れ様です」
「お疲れ様〜。今日もよろしく〜」
緩い挨拶をするのは、この酒場の看板娘であるミサ・シルキール。とても綺麗な黒髪で、ふわふわとした雰囲気がある。それでいて仕事はしっかりこなしている。
「あの、ミサ…」
「ん〜?どうした〜?」
私は手を伸ばして部屋を出ようとしていたミサを止める。
「後で、相談したいことがあって…」
「うん、わかった。仕事終わってからね〜」
ミサさんは優しい。仕事の手伝いで忙しいのに相談に乗ってくれる。
仕事が終わり更衣室で着替える。着替え終わるタイミングでドアが開きミサさんが入ってきた。
「ごめんね〜、またせた〜?」
「うんん。今、着替え終わったところ」
「そっか〜、ここで話すより私の部屋で話そ〜?もし秘密の話だったら人が来るとまずいから〜」
「そうだね...わかった」
ミサさんは緩い感じだが周りを良く見ている。確かに秘密の話をしようとしていた。
荷物を持ちミサさんに続く。二階に上がり一番奥の部屋へはいる。どうやらここがミサさんの部屋らしい。部屋にはほとんど物がない。女の子らしい物がない、それどころか必要最低限な物しかない。
「ごめんね〜、つまらない部屋で〜」
「そんなことないよ…ただ少し驚いただけ…」
私の様子を見て謝ってきた。
ベッドに腰掛ける。
机には上がる時に持ってきたお茶が二人分置かれている。
ミサさんは対面になるように椅子を持ってきて腰をかける。
「で、相談事って何〜?」
「あ、うん、えっと、」
ミサさんは単刀直入に聞いてくる。
「もしも、もしもだよ。もしも私が指名手配されてる犯罪者を匿ってるとしたらどうする?」
「具体的だね?」
「いや、違うの、もしもだから!…通報したりする…?」
「そうだね〜、ティーネちゃんが匿ってるってことは悪い奴ではないと思うんだ。だからそんなことしないよ〜」
「そ、そっか…良かった…」
「ん?」
「なんでもないよ…」
ボソッと呟いてしまった。
ミサさんはどこまで私の事見えてるのか分からない。きっと、犯罪者を匿ってることは今知られてしまったが言わないと思う。どこか確信している。
「それと、もう一ついい?頼み事なんだけど…」
「ん〜、いいよ〜」
「その、仕事の時間を増やして欲しいなぁって…」
サエギさんを住まわせるときっと今のままではきっとお金が足りないだから仕事時間を増やさなければならない。
「わかった、伝えとく」
「ありがとう…」
ミサさんは理由を聞いてこなかった。
仕事の帰り冒険者総合ギルドに寄る。
「あの〜…」
「どうしました?ギルドの加入ですか?それとも依頼ですか?」
「いえ、情報が欲しいなっと思って…」
「わかりました、少々お待ち下さい」
初めて入いるここは、物騒な物を持った屈強そうな人達が沢山いる。受付の方はとても優しそうだ。
「お待たせいたしました。で、どのような情報が欲しいですか?」
「えっと、最近出た指名手配犯の情報が欲しくて」
「あたもですか…」
「えっ?」
「いえ、多額の懸賞金が掛けられているので沢山の人が情報を聞きに来るんですよ」
「そうなんでね…」
「せっかく来たのにすみません、ここの指名手配書に書かれていること以外は私たちギルドも知らないんです」
「そうですか…」
冒険者ギルドは国から発行された指名手配犯書を出しただけで内容は一切聞いていないという。
ギルドを出て家へ帰った。