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幸せへの始まりの朝

 眩しい光で目が覚める。

「おはようございます」

 優しい声が上から聴こえる。顔にあたる温かく柔らかい感触、甘くていい香りがする。

「あまり動かないでください。くすぐったいので…」

「俺は…」

 あの時抱き締めて貰って泣いて、疲れて眠ってたのか?

「あのまま寝てしまったんですよ?覚えてますか?」

「あっ、あぁ、すみません、今どきます」

 そう言い離れようと動くが、彼女は抱き締めてきて離れられないようにしてくる。

「大丈夫ですよ。もう少し…このまま…良いですか?」

「…えっ?」

 彼女の口からそんなことを言われ、混乱する。

「その、温かくて、居心地が良いので…」

 恥ずかしそうに言ってくる。助けてもらったので断ることが出来ない。男である以上、こんなことをされていると流石に生理現象を抑えられない。だが、それでも、命の恩人にそんなことを意識するのはダメだ!!抑えろ息子よ!!

 しばらくの間抱き枕のようになっていた。


「すみません。はしたない事してしまい」

「い、いえ、こちらこそすみません」

 本当にごめんなさい。

「?」

 何故俺まで謝ったのか分からないようで首を傾げている。いや、本当に申し訳ない。助けてもらいながらも、あんなことを考えるなんて…。

 考えていると突然お腹が鳴る。

「そうだ、ご飯!」

 思い出したかのように手を叩き部屋の奥の方へ行ってしまった。

「はは、すみません。長居してしまって。今出ていきますので…」

 起き上がりドアに向かおうとしたら走って来て腕を掴まれた。

「ご飯食べてください。準備しますので!」

 男という生き物は何故女という生き物に弱いのか。

「わ、分かりました…」

 断ることが出来ない。彼女はまた部屋の奥の方へ向かって行く。

 朝食の準備が出来るまで座って待つか。いや、待て、手伝わなければ男としてどうなんだ?駄目な気がする。容姿も駄目なのに、中身まで駄目ではただのクソ人間ではないか!

 そう思い直し、座った長椅子から再度立ち上がり、彼女の向かった奥の部屋に向かうと下着姿の彼女の姿が目の中に入る。

「えっ…」

 彼女はどうやら着替えをしていたらしくちょうど服を脱いだところに俺が…。

 彼女の顔が赤く染まっていき…。


「朝食の準備が出来ました…」

 未だに顔が赤い。俺の顔もきっと赤いだろう。

「す、すみません」

「大丈夫ですよ…その…手伝ってくれようとしていましたし…あれは事故なので大丈夫ですよ…」

 恥ずかしそうにしながらも、優しく許してくれる彼女は天使だろうか。

 二人で一緒に祈りを捧げ朝食に手をつける。

「美味い!」

 温かく優しい味、美味しい。硬いパンにスープを漬けて食べる。

「ふふ、それは良かったです」

 彼女は優しく微笑みながらパンにスープを漬けて口に入れる。

「しばらくの間、泊まってってください。」

 突然そんな事を言われた。

 とても有難いことだが…。

「すみません、それは出来ない。もしも匿っていることが知られたら貴女が危険だ。これ以上迷惑を掛けられない、だから…」

「お気遣いありがとうございます。ですが、大丈夫ですよ。困ってる人を助けたいですし、それに、優しい方なので」

 とても優しいその言葉は俺の胸を鷲掴みにする。

「あっ、そろそろ私行かないと」

 立ち上がり、慌ただしく食器を片付け出掛ける準備をする。

「ドアは鍵閉めませんので、外出たい時は出て大丈夫ですよ。ですが、気を付けてくださいね。行ってきます!」

 何も言葉を掛けられずに行ってしまった。


 誰も居なくなったティーネの家。

 流石に人のしかも命の恩人であり、女性の家を物色するのは悪い。だからと言って外に出ればきっと捕まり殺される。逃げ切るのは無理だろう。

 出来ることと言えば、リリィ先生から教わったことを繰り返しやることだ。

 他の勇者たちと一緒に城で魔法を教わっていた。だが魔力が無い俺は一切使うことが出来なくリリィ先生を困らせていた。醜くキモイ俺にそれでも優しく教えてくれるリリィ先生。『魔力が無いなら魔力を使えばいい。』と言われた。世界は魔力で溢れている。それを使えばいいと。言っていたが、とても出来そうにない。やり方を教わったが、どうもリリィ先生は感覚派のようで教えるのは下手である。何回も挑戦して失敗を繰り返す。

 今日は特訓で潰れるだろう。


 ティーネが帰ってくるまで、特訓を続けた。

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