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第七話  本物の妖怪?コスプレ?いいえ、ただのツンデレです。

最近噂になっている茜雲一家の家長にして一番の平凡・非凡を第三者(という名の読者様)から他称される父。昭義は今日も今日とて些細なことから困り果てた事態に陥ってしまっていた。


いや、今回のこともそれまでのことも昭義自身が悪いのかと聞かれれば、厳密にいえばすべてほかの人間が悪く、昭義は巻き込まれてばかりいたのだが。


実は今回もそんな感じである。


それというのも原因は今、目の前で静かにたたずみ


「最近噂になっている人間の一人とお見受けいたす。俺の名は白桜はくおう、貴殿と一戦お手合わせ願いたい」


と言っている青年にあった。


半年くらい前に娘に付き合って家族で現代から異世界へと引っ越しし、妖怪だとか仙人だとか言ってあがめられるようになった。次はその国を治めていた国主に懐かれ、その側近に最重要人物として警戒されてしまった。


妻である千梨といちゃいちゃしながらフラグというフラグを乱立させたりそれを回収したり死亡フラグが立ったかと思えばあっさりとへし折ってみたり、もうお前が主人公なんじゃねーの!?とか最近作者が思って主人公交代させようか本気で悩んでいたりする昭義であるが、ここのところ色々あったから、もうしばらくはおかしなことは起こらないだろうと思っていたがそれはどうやら甘かったらしい。


いや、昭義だけではなく海千山千なはずの家族も見通しは甘かった。さすがに油断していた。


まさかまたおかしなことに巻き込まれるなんて思っていたら、きっと葵達は昭義を一人になんてさせなかっただろう。少なくとも家族のうちの誰かは一緒に付いてきたはずだ。


しかし、先のことというものは分からないもので。後に悔いるから後悔と書く。


どうやら昭義は異世界に引っ越ししてきてから主人公の必須スキルの一つ、巻き込まれ体質なるものを習得してしまったらしい。きっとこれからも物語のヒロイン並みにいろいろ巻き込まれてくれることだろう。


何はともあれ、平凡であることが一番の非凡になってしまっているステータス的には村人Dだが葵の作りだした全能の球で防御力を最高にし、帰還アイテムを片手にちょっと散歩と出歩いたのはいい。が、少し思い出してほしい。道久と出会ったのも、こんな風に暇をもてあまし外に散歩に出かけた時だったということを。


そして今、安全に家に帰る手段があるため迷子になることも考えずにあちこち散歩している最中に、おかしな青年に現在進行形でケンカ(?)を売られてしまうような事態に陥ってしまっていた。


生まれてから今まで喧嘩を売られるなんて一回だってなかった昭義は(実は家族関係で何度かはあったのだが、知らないうちに処理されてきた)ただ今それはもう盛大に困り果てていた。


いや、それだけならまだしもある意味困っている一番大きな問題は青年の背中にあった。


並の人間なら卒倒しても明かしくない闘気などものともせず(といか存在すら感知できず)青年・・・の背後をじーーーーーっと、それはもうじっと凝視していた。


「・・・一体どうしたのだ」


怯むでもなく応戦するでもなくただ見つめられさすがに居心地が悪くなったのか少したじたじになってきたのに構わず、すっと青年・・・の背後にあるものを指差した。


「・・・それ、本物かい?」


昭義が指をさした先、つまるところ青年の背中には立派な白い羽が生えていたのだった。


いや、本物なのは昭義も見ていてわかる。


ばっさばっさとなめらかに動いているのだ。


もしこれが偽物だった場合、そうなると目の前の青年は羽が生えた硬い口調の美青年からただのコスプレ美青年に一気にジョブチェンジしてしまう。まったくもって残念極まりないジョブチェンジだ、誰もそんなことは望んでいない。一体誰得だという話だ。


一方まさか自分の羽について聞かれるとは思ってもみなかった白桜は一瞬目を点にした。

 

殺気をぶつけようが闘気をぶつけようが自然体の相手に久々に心躍る気持であったのに、まさかの第一声。みなぎっていた気合も抜けてしまうというものだ。


さては人違いかと思いもしたが、万人が異形だと恐れるこの羽を見てもおびえるどころか首をかしげ本物かどうかを聞いてくるというまさかの態度。噂通り肝の据わった人物ではあるのだろう。


相手に確認も取らずそんな風に感心して自己完結しまうあたり、白桜もうわさに踊らされているうちの一人である。


まったくもって本人達の望んでいない方向性でどんどん話が進んでしまっている。ちょっとやそっとのことではもう修正は効かないかもしれない。


ただ静かに暮らせられればいいと考えていた一家だが、知らないところで噂は広まるし勘違いしている人間(ここにきて人外が一人追加された)は加速していく一方。


念願の平凡でだれにも邪魔されないスローライフを手につかむことができるのか、それは誰も知らない。


「いかにも本物である」


「へぇ!それはすごいなぁ。ちゃんと自分の意思で動かすことができるのかい?」


「むろん。この羽は俺の体の一部、自由自在に動かすことができる。空も飛べるぞ」


白桜がそう言って羽を動かし少し宙に浮いてみせると昭義は眼を輝かせた。


目の前に明らかに人ではないものが人では絶対にできない(一部例外を除く)ことをやって見せても恐れたりはしない。むしろ彼の家族が白桜を超えるびっくり人間の集まりなのだ、ちょっと背中に羽が生えたりそれで空を飛んで見せてくれたり天狗だったりしただけでは驚くこともない。驚けない。


ノリと気分はこんな昔の時代だし、妖怪の一人や二人いたっておかしくないよねくらいのものだ。


それに加え背中に羽とか一部の人間が聞いたら喜びそうなものを目の前にし、おまけに昭義的には空を飛ぶことは夢(と書いてロマンと読む)だ。うっかり年甲斐もなくはしゃいでしまている。テンションもうなぎ昇りだ。


「いいなそれは!まるで烏天狗みたいじゃないか」


「む、俺は大天狗であり烏天狗ではない」


「ん?天狗って種類があるのかい?俺は烏天狗くらいしか知らないなぁ」


「うむ。天狗の中にも種類や階級はあってな、長くなるから割合するが長を筆頭に上から大きく分けて大天狗、小天狗に分けられる。烏天狗などは小天狗に分類される」


「そ、そうなのか?」


有名どころを知っていただけの昭義は今まさに目から鱗がぽろぽろと落ちているような感じだ。まぁ、妖怪マニアでもないかぎり天狗の階級など知っている人間は少ないから当たり前といえば当たり前かもしれないが。


目を輝かせる昭義に白桜もまんざらでもないようにうなずき返す。


天狗の羽はもともと黒く、白桜のように真っ白い羽根をもったものはほかにいない。ゆえに天狗仲間の中ではつまはじきんされていた白桜は生まれて初めて自分の羽を褒められ気分が軒並み上昇した。昭義に対する好感度などマッハの勢いで上昇中である。


なめらかな光沢のある羽は毎日かかさず手入れをしていて羽毛のような柔らかさの中に絹のようなさらさらとした手触りがあり、堂々と自慢のできる一品だ。


この自分でも美しいと感じている羽を他とは違うという理由で嫌いになったり卑屈になったりしたことは一度もない。嫌味を言われれは負けずに言い返したし、売られた喧嘩はすべて高値で買ってきた。羽の色が違うというだけで相手から馬鹿にされないように剣の腕を狂ったように磨き、気がつけば今では司国随一の豪傑と呼ばれるまでになっていた。


しかし、子供のころから白い羽を揶揄って『色なし』と言われ続けてきたことは知らないうちに心の傷になっており、誰にも褒められたことのなかった羽を褒められるという事態に白桜はひどく喜んだ。


「そうだ。す、す、少しだけなら触ってみてもいいぞ」


「おお!本当かい!?・・・・・・・・・うわぁ、柔らかいな。奇麗な色しているし、こんな手触りのするクッション欲しい」


「そ、そうか!?ま、まぁ自慢の羽だからな、そのくらい当然のことだ」


はしゃいでいる中年男と、羽を触られて、しかもなんだか絶賛されていることに照れている青年(しかも若干ツンデレが入っている)。


なんだかようく分からないカオス空間(別名昭義フィールド)があたり一面に蔓延していたが、当の本人たちはまったくもって気が付いていない。


ここに茜雲家ツッコミ担当の兄がいたら「最初の手合わせの申込どうなったんだよ」と突っ込んでくれただろう。基本ボケの妹がいても「お前はツンデレか!」くらいには突っ込んでくれたかもしれない。母がいたなら昭義と一緒になって触っていたかもしれないが。


何が言いたいのかといえば、ここには突っ込みが不在であるということだ。


せがまれるままに羽を触られ、飛んでみたいという要望にこたえるべく昭義を抱えたまま山の上空を一周。そのまま茜雲家で夕飯をごちそうになり、あれ、俺ってそういえばなんでここにいるの?と白桜が自分の現状に疑問を抱いたのは、今日はもう遅いから泊まって行きなさいと言われ、一日の汚れを落とすべく風呂で湯船につかっている最中のことだった。


今回はツンデレコスプレ妖怪元いじめられっこな美形最強剣士青年が登場いたしました。

あえていいます。どうしてこうなった私!!

本当は渋めの口調をした王道(白い翼の最強美丈夫)を出したかっただけなのに!なんで途中からツンデレコスプレ妖怪元いじめられっこな美形最強剣士青年になってしまったのか実は私でもわかりません。書いている途中にキャラが暴走列車のごとく暴走してしまいました。orz

おそらく彼は今後昭義になついてちょくちょく茜雲家へと遊びに来るに違いありません。きっと千梨と二人で昭義の取り合いをしてくれることでしょう。

お父さんは今度こそヒロインが立てるべきであろうフラグを立てた揚句回収してしまいました。

もちろん反省はしています。しかし後悔はしていません!!!ものすごく楽しかったです!(おまっ・・・)




お礼コーナー

tyuio様

塩キャラメル 様

おっさん様


感想&誤字脱字報告誠にありがとうございました!

亀並みの更新速度になっておりますが、これからもがんばっていきたいと思います。



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