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ダンジョン捕食者の交流

「本日より、そちらでお世話になるヨハネと」

「エーデリカです。この度はお招きありがとうございます」


僕とエミリーはダンジョンの入口で二人を出迎える。

表向きは『白翼』からの出向の受け入れだが、実のところはエミリーとヨハネの取引によるものだ。

聞くところによると、エミリーに敗北したヨハネは服従することを誓ったらしい。

僕は暗示の解けたエーデリカに構っていて、その場面よく知らなかった。

ともかく、今はエーデリカと合流できたことを喜ぼう。


「事情は概ね聞きました。やはりアクトレアがあなた様を勧誘にきましたか」


スカルヘッドはヨハネの顔で自嘲気味に笑っていた。


「いい迷惑ですわ。私はやりたいことがありますのに………いっそのこと直々に潰してしまいましょうか」


昨日の化け物相手に一体どうやって勝つつもりなのか。だがエミリーの嗜虐的な笑みは負けることなどありえない。と、言っているようだった。


「こうならないように色々と手を回していたんですけどね………どうなっても知りませんよ?」

「あなたの主が馬鹿ではないと願ってますわ」

「リリス様は調和を望んでますから、過ぎた力を誇示すれば必ず争いに、」

「そこはあなたが上手くやりなさい」


スカルヘッドは困ったように首を傾げてみせるが、エミリーはそれ以上取り合わない。

それだけで力関係は明白なのだが、納得いかないエーデリカがエミリーに噛みついた。


「来て早々、横暴が過ぎるのでは?」

「あなたと言葉を交わすつもりはありませんわ。せいぜい邪魔にならないよう。隅っこで縮こまってなさい」

「な!?」


エミリーが何もない空間に手を払う。するとエーデリカの足元に大きな穴が空いた。咄嗟に足場を失ったことに驚愕する間もなく、暗闇の中にエーデリカは吸い込まれていく。


「エーデリカ!!何をしたんだ!」

「心配しなくとも、VIP待遇でもてなしてあげますわ。疑うのなら、こちらの用が終わるまでレイも同じ部屋に居るといいわ」


言うが早いか、エーデリカ同様に僕も暗闇に落ちていった。



あれから、どれだけ時間が経っただろう。

気がつけば僕は一人になっていた。VIP待遇とはよく言ったまので、落ちた先はただただ広いだけの部屋だった。


食料もなければ水もない。


初めは感じていた飢餓感も虚に消えて、今の僕は人間ではなくなったんだと感覚で理解した。


「誰………だったのかな」


足元に転がる白骨に問いかける。大事な者だったはずなんだけど、ちゃんと思い出すことができない。


「ふぅ、やっと終わりましたわ」


久しぶりに聞いた他人の声は、渇いた心を潤した。


誰だって構わない!僕は………ここにいる。


「君は?」

「あらあら、忘れてしまいましたの?でもその方が好都合かもしれません。さあ、貴方は私とこれから悠久の時を過ごすのですよ」


僕は誘わられるままに小さな手をしっかりと握りしめる。


ああ、僕はもう一人じゃないんだ。

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