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神降文明 救世の賢者の記録  作者: はとかぜ
第1章 幼き日の記録
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1章2節 神殿にて

 首都まで行く道のりは、綺麗に整備されているわけではなかった。


 これは首都の学校に通う者への試練とも呼ばれていて、実際は整備をするのに労力がかかりすぎて放置されていただけなのだが、入学の際、予定としてあったはずの人数の半分にまで減っていたというのはよくある話らしい。


 魔族も出るので、その対策もしなければならない。


 その学校に通うための実質的な試験がこれであった。


 直通の鉄道が出来れば楽なのだが、作るにはいろいろと障害が多すぎる。


「今日出発か……先に神殿の方に行っておこうか」


 そんなわけで、大抵の人は出発前に神殿などで安全を祈願して行くのだ。天使とかは実際にいるし、地上に降りているときであれば、こういった神殿を拠点とするのだ。


 しっかりご利益のありそうな神殿が、この近くにあった。


 それは、街から離れていくに連れて、どんどん細くなっていくあぜ道の一つを辿ればいい。


 運が良ければ10分でたどり着くが、その逆もしかりだ。それもそのはずで、神殿は特殊な結界で守られているのだ。魂に染み付いた(ケガレ)が、その神殿までの距離を生み出す。その頃の私に、そんな話は微塵も分からなかった。


 あぜ道を、草木の生い茂る一本道をずっと進み続ける。なかなか辿り着かなかったのはよく覚えている。


 私が神殿に辿り着くのは、望まれていなかったのかもしれない。


 草花をかき分け、もはや獣道同然となったあぜ道を進んだ。


 そして、体感1時間ほど歩き続けてようやく神殿にたどり着いた。


 白い柱が、その巨大な構造物を支え、さらに向こう側に神殿内部へと続く門があった。


 空も開けて、青空が覗いていた。私は神殿内部に続く石畳の道を、一歩、また一歩と歩き続けた。


 薄暗い神殿を進んだその先には、薄く水が張り、雲の浮かんだ青空が映し出される、まさしく神殿の中心、基底とも呼べる場所があった。


「わあ……」


 その時私は、その光景に息を呑み、絶対的な何かを、そこから感じ取った。伝承でしか聞いたこともなかった“神”のような存在が、かなり身近にあるような、そんな気持ちがした。




 それからしばらくは、その神殿で、自分がずっと無事であれるように、天に向けて祈り続けた。祈りが通じたのか、帰りの道のりはそれほど時間がかからなかった。


 あと一時間後に、私はこの村を出ることになる。首都への旅程はスムーズに行けば一週間ほどの見立てだった。


 持っていく私物もそこまで多くはなかったので、すぐに荷物をまとめて、出発する用意が整った。


 村の人への挨拶も済ませた。これからしばらくはこの村には帰れない。




 私がこの村を次に訪れたのは、この32年後のことであった。

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