15分 即興小説「スゴ技ブルーシート」
「これ、どうやったら綺麗に張れるんだ?」
この間の台風で屋根の一部が壊れた実家。
手一杯の修理業者が来るまでの間の応急処置。
雨漏りをなんとかするために俺は会社を休み、実家に帰って屋根に上る。
そして、ブルーシートを実家屋根に張っている。
「こういう時はネットで聞くんだよ、アニキ」
小生意気だが身軽な妹は、屋根の上でスマホで何かを調べている。
「ふむふむ、スゴ技で棟から両方に垂らせば綺麗に張れるんだって」
まだ学生の妹、それでも俺がブルーシートを張るのを手伝ってくれる。
「アニキ、どうして帰ってきてくれたの?」
「この家には色んな思い出があるもんな。それに親孝行したい時に親はいないってのは嫌だからな」
台風時に避難中、腰を痛めた父。
看護師の仕事が忙しい母。
二人が俺達を育ててくれた家。
「あ、こんなところにボールが挟まってる。もしかして、これ?」
「うん。それ、キャッチボールしてた時にアニキが暴投したやつだね」
父や妹と狭い庭でキャッチボールをした思い出がよみがえる。
「まるでタイムマシーンみたい。こういうのもスゴ技だったり?」
「そうだな」
俺は屋根から落ちないようにしながらブルーシートを張る。
まだ、この家が壊れないように。