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追放

初投稿作品になります!

 「ゼスト……君はもうこのパーティーには必要ない。

 今日でこのパーティーを抜けてくれ」


 目を開いたら、知らない天井が目に入り、突然その言葉を言われた。

 俺は、何を言われたのか分からなかった。


 「……アイナ、何の冗談だよ」


 そこにいたのは俺たち幼馴染パーティーのリーダーで勇者のアイナだった。

 アイナは腕を組み、人差し指で一定のリズムを刻んでいた。


 「冗談じゃない。今回、君が負傷しなければ私たちはまだ先に進めていたんだ。

 つまり君は私たちの足を引っ張ているんだ。だから君を追放することにしたんだ」


 俺は何故自分がベットの上にいるのかを思い出した。

 ダンジョンの探索中に魔物に襲われて負傷したからだった。


 「っ! けど魔王を倒すには俺も必要だって話だっただろ!

 リーナとオリヴィアからも何か言ってやってくれよ!」


 魔王を倒すためには、女神が加護を与えたものが協力しなければならない。

 この世界の常識だ。

 俺たちに与えられた加護は、


 アイナが勇者

 リーナが剣聖

 オリヴィアが賢者

 そして俺は夢双者 


 女神の加護は4つのうち、1つはその時現れた魔王を倒すのに適した加護になる。

 今回であれば俺の加護だ。

 俺の加護はよくわからないもので、3人と比べ戦闘力で明らかに劣っていた。

 けど、自分なりに3人の役に立とうと努力していたんだが……


 「あたしはアイナに賛成。

 だってあんた戦闘で役に立ってないじゃない。

 やることと言ったら戦闘中の指示だけだし。

 それくらいあたしらでも判断できるっての」


 「私もです~。

 ゼスト君がいなければ、魔力の節約にもなりますし~

 アイナちゃんの言う通り判断は自分で出来ます~」


 リーナは自分の髪を指でくるくるといじりながら

 オリヴィアは俺に目を向けることなく視線を下に逸らしたまま答えた。


 「なっ……」


 2人にも同じようなことを言われて言葉を失ってしなう。


 「というわけだ。ゼスト、2人も私と同じで君の追放に賛成している。

 それに、今までは魔王を倒すのに女神の加護を受けた者が全員必要だったからと言って今回もそうだとは限らない。

 分かったら荷物をまとめて出て行ってくれ」


 そう言われた俺は、アイナの言葉にいら立ちを覚え、言い返すためにアイナの方を向いた。


 「っ!?」


 でも言い返せなかった。アイナの表情を見てしまったら言えなくなってしまった……

 リーナとオリヴィアにも目を向けたが2人もアイナと同じような表情をしていた。


 「……分かった。 パーティーを抜けるよ」


 3人の顔を見てしまった俺にはその言葉しか出せなかった。


 「……分かってくれてよかった。ここの治療費はもうこちらで払っているから心配しなくていい。

 あとこれは、餞別だ」


 そう言ってアイナは、麻袋をおいた。

 膨らみ方を見るにかなりの金額が入っているだろう。


 「治療費のことは礼をいうが、餞別は必要ない。

 お前らにも金は必要だろ」


 「だが……」


 「あんた、何言ってんのよ。 あんたの方が必要でしょうが」


 「そうだよ~、ゼスト君」


 俺が必要ないと言ったがそれでも、アイナたちが渡そうとしてくる。

 それに対して俺は、


 「必要ないって言ってるだろ!!」


 苛立ち怒鳴ってしまった。

 俺が怒鳴るとは思っていなかったんだろう、3人は一瞬体を硬直させていた。


 「分かった。これは持って帰る」


 そう言ってアイナは渋々麻袋をしまっていた。


 「あぁ、そうしてくれ。

 それで要件はこれで終わりか? 終わったなら出て行ってくれ」


 「あぁ……それではな、ゼスト」


 「じゃあね……ゼスト」


 「バイバイ……ゼスト君」


 そう言って部屋から出ていく3人。

 3人が出て行ったのを確認してから俺は


 「くっ……うっぅぅぅぅ……」


 自分に力がないことに悔しく思いながら声を殺して眠るまで泣いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] アイナ達の表情ってどんな表情だったのだろう?軽蔑?憐れみ?悲しみ? この後語られるのかな?
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