私は夫をアップデートする
黒森 冬炎様の 「ミラクル•チェンジ〜改造企画〜」 参加作品です。
「お皿を洗っといたよ」
そう言った貴方の表情は読むのが大変だけど、少し多分、得意げ。
「お皿に洗い残しあるよ」
そう言いたいのをぐっと飲み込み、心にも無いことを言う私は多分、道化。
「うわー!? ありがとう! 嬉しい!」
そんな嘘を積み重ねて、塗り重ねて、少しずつ改造する。
私は今日も夫をアップデートする。
卵焼きはしょっぱいし。
味噌汁は逆に薄いし。
掃除は雑で汚れてるし。
食器棚はグチャグチャだし。
「凄い! 天才! 頼りになるー!」
私は今日も夫をアップデートする。
嘘も積み重ねれば自信になるの。
本当の事を言ったら、やる気を失くすもの。
塗り重ねて、高く高く積み上げて。
貴方が上る梯子を作るの。
だって家事をできるようになって欲しいし。
だってこのままじゃ私が居ないと貴方、何もできないし。
「醤油はどこ?」「石鹸は?」なんていちいち聞くのもどうかしてるし。
だって私の方が多分、かなり先に死ぬし。
このままの貴方を残して死んだら、私、成仏できないだろうし。
私が居なくなった時に、梯子に上って「俺は一人でも心配ないぞ!」って叫んで欲しいの。
だから、私は今日も夫をアップデートする。
「凄ぉい! 完璧!」
このお話はフィクションです。
……多分。
お読み頂き、ありがとうございました!
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