第21話
真人はスマホの電源を落としているらしい、そうでなければ今頃着信がすごいことになっているだろう。
「2人は駆け落ちなんだよね」
「え!!!ほんと?」姉の目がきらきらしていた。
「ほんとほんと、どうしますか、お姉さん」
「まあ、だいたいのことは察しがつくけど、ねえ」
「良かったら、真人のお母さんに連絡してくれないかな?1日泊めるって」
「うん、たしか、中学の時の名簿見れば、真人君のお母さんには連絡できるけど」
「ごめんなさい、私、こんなに大事になるなんて」さくらの目にうっすらと涙が浮かぶ。
「さくらちゃんは何も悪くないよ、ごめん、俺がお母さんに余計なことを言ったから」
「2人とも虎の友達なんだから、私が面倒みるよ、心配しないで」そう言って姉は部屋に戻って真人のお母さんに電話をし始めた。夜遅くにすみません、と言ったような通話が聞こえてくる。3人はどうなるかとドキドキしながら結果を待つ。
姉が電話を切って、3人のほうを見る。両腕で大きく丸のポーズをしている。
「今日は真人君泊まっていっていいって。その代り、明日はきちんと家に帰って学校も行くように、好きな女の子ができたら、その分勉強も頑張れますか?って言っていたわよ」
「え?それって?」
「さくらさんとのことも許してくれるみたいだよ、お母さん」
真人とさくらがまるで申し合わせたかのように、深々と姉にお辞儀をする。
「ああ、そんな、いいって、私は電話を一本入れただけ、なにもしてないぞ、それより、さくらさんは帰りなさい。多分心配しているでしょ、ご家族が」
「はい、あの、私何て言ったらいいのか、ありがとうございました」また一礼する。
「真人、さくらちゃんを送ってあげなよ、帰ってくるのは何時でもいいからな。帰りはLINEだけ一本入れてくれ」
「あ、うん、ありがとう虎、お姉さん、本当にありがとうございます」
「いいって、頑張るのは君なんだからね」
「はい」そう言って2人は玄関から出て行った。
「姉貴、ありがとう」
「虎は、まあ、巻き込まれた感じね」
「そうなるのかな」
「でも、大変な時に頼りにされるのはいい男に育っているのかもね」
「そうかな?ありがとう」




