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Six Distance  作者: 神名 信
18/25

第18話

 大塚駅に着くとホームは帰りの会社員でごった返していた。

 虎が紗矢の手を握る。

 「はぐれちゃいけないから」

 「うん。」紗矢は強く虎の手を握った。このままずっとここにいれればいいのに。そんな紗矢の思いとは関係なく、山手線は間隔を空けずに大塚駅に到着した。

 ひどい混雑で押しつぶされそうな車内、虎が壁際に紗矢を寄せてくれて、人の圧力を全身で受けてくれる。紗矢には虎のぬくもりが感じられた。

 ・・・私、ここで死んでもいいや、後悔しません。

 「明日は歩いて帰ろうか?それでも15分くらいだよな?」

 「うん、うん」紗矢はほんとに小さくそれだけ答えた。

 わずか数分で池袋駅に到着する。今度は降りる乗客に流されるようにホームへと向かう。虎はここでも手を握っていてくれた。

 そのままの流れで手をつないだままマンションへ向かう。

 「俺さ、夏は夕方っていうか、夜っていうか、こういう時間が好きなんだよな。涼しいじゃん」

 「うん、だよねえ」

 「良かったらさ、2人で花火とか見に行く?多分7月とかになると思うけど」

 「うんうん」紗矢はスマホの占いのことを思い出していた。評価に☆5つ、つけておきます!

 二人は公園に差し掛かった。ここを抜ければすぐに紗矢のマンションだ。

 「紗矢、時間大丈夫か?」

 「ん?大丈夫だよ、なに?」何時間でも一緒にいたかった。

 「俺さ、」と言いかけたところで虎のスマホに着信があった。見ると芽衣からだった。

 「芽衣か」

 「出てあげなよ」

 「あ、うん」

 着信に出ると、明日はお菓子とか一切買ってこないでとのことだった。最後におやすみとお互いに言って電話を切る。

 「そんなこと明日学校で言えばいいのにな」

 「心配してくれたんだよ、多分」

 「そうかな」

 着信のおかげで、タイミングを失い、そのままマンションに着いた。

 「じゃあ、また明日な、紗矢。明日は歩いて送るからな!最短ルート検索しておいて」

 「分かりました、虎」

 「おやすみ」

 「おやすみなさい」紗矢は巨大なマンションに帰っていった。



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