第11話
日曜日は図書館が5時で終わるということもあり、真人は15分歩いて自宅マンションまで戻った。家に帰ると、休みのはずの母親は不在だった。どうやら、また依頼人に呼び出されたらしい。テーブルの上には、これで夕ご飯を食べてくださいというメモと現金が置かれていた。
宅配アプリでピザを注文し、待っている間も英単語を覚える。ドアホンが鳴り、ピザが届いた。ミックスピザとシーザーサラダ、ウーロン茶を胃に流し込み終わると、すぐに勉強机に戻った。今日は11時まで、あと5時間、ノンストップで、と気合を入れていた。
芽衣がバイトから帰って食事を終え、お風呂も終わると、既に8時だった。湯上りにはこれだよね、と買って置いたスーパーカップを食べる。
いつものTシャツに短パンといった姿で妹の部屋に入っていく。
「いきなり入ってこないでよ」
「何だー?見られてまずいものでもあるの?」
「ないけどさ」
「ところでこれ見て!」昼に渡されたメモを見せる。
「お、ラブレター?」
「かなー、そこそこイケメンだとは思うけど」
「え!お姉ちゃんどうするの?」
「こうする」言って、メモをびりびりに破いた。
「わー、さすが、黒木さん?虎さんだけなんだね」
「虎かあ、お姉ちゃん分かんないよ」
「どうしたの?」
「大人の事情」
「あー三角関係?」
「まだ丸にも三角にもなっていないのかもね」
「弱気なお姉ちゃんはらしくないよ」
「妹のくせに生意気な」
「あ、そういえばアイスありがとうね」
「どういたしまして」そう言って芽衣は自室に戻った。
部屋に戻ってベッドの上に倒れ込む。バフッといい音がする。
黒木 虎
虎
虎君
私の好きな人 ねぇ、私のことどう思っているの?
あの子のことが好きなんですか?
芽衣の胸は締め付けられるようだ。
明日、会えるね。




