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私が彼と出会ったのはアルバイト先の工場。
私の働く小さな部品を造る部署に、彼が新人として入ってきた。
おどおどした青年。
私が彼の教育係に選ばれた。
作業の基本から丁寧に教えた。
彼はとても不器用だったけど、私はすぐに真面目な誠実さに気づいた。
打ち解けてくると少しずつ笑顔を見せ始めた。
かわいらしい笑顔。
私たちは昼休みをいっしょに過ごすようになった。
工場の裏の誰も来ないベンチ。
彼は自分のことを話した。
怪獣が好き。
音楽が好きで作詞作曲している。
曲を唄ってくれた。
私も話した。
毎日の作業に鬱々としていた私の心は、癒されていった。
この時間が永遠に続けば良いと思った。
彼はひどく繊細で、すぐに落ち込む。
その度に私は励ました。
「頑張って」
「大丈夫」
「そばにいるから」
「落ち込むことはないよ」
私の言葉で少しずつ元気になっていくように見えた。
彼との楽しい時間は長くは続かなかった。
いつもの昼休み、彼がこう言った。