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まどか 乃木坂学院高校演劇部物語  作者: 大橋 むつお
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98:『ビデオチャット』

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語


98『ビデオチャット』





 その夜、はるかちゃんとビデオチャット。


 主に自衛隊の体験入隊の話で、ウフフとアハハだったんだけど、話が一区切りついたとこで、はるかちゃんが切り出した。



「月末の土日に例のCMのロケに行くの。荒川でよく紙ヒコーキ飛ばしてたあたり。時間があったら、家の方にも寄るんだけど、こういうのって団体行動だから、よかったら現場に来てよ」


「行く行く。お仲間みんな連れてっちゃうから。で、どんな役者さんが来るのよ?」


「堀西真希さんとか……」


「え、いま売り出し中の!?」


「うん。彼女がメイン。で、高橋誠司……」


「ゲ、あのおじさん!?」


「知ってんの?」


 わたしは(思い出したくもない)コンクールのいきさつを説明した。はるかちゃんは大笑い。


「アハハハ……それから、上野百合……この人も新人さんみたい。同年配だからちょっと安心」


 はるかちゃんたら、すっかりリラックスしてポテチを食べ出した。


「あ、はるかちゃんズル~イ」


「スポンサーさんから山ほどもらっちゃったから。う~ん、うまいなあ!」


「こういうこともあるかなって……ア!」


 バサバサバサ!


 机の上のポテチに手を伸ばした拍子に机の上のアレコレを落としてしまった(^_^;)。



「相変わらず、整理整頓できないヒトなんだね、まどかちゃん」


「はるかちゃんに言われたかないわよ……」


 わたしは、ポテチをたぐり寄せ、あとのアレコレを足でベッドの方へけ飛ばそうとして、あれが足先に当たったのに気づいた。


「どうした、ゴキブリでも出た?」


「ううん、薮先生から預かった写真け飛ばしそうになっちゃって」


「ホホ、早手回しのお見合い写真ってか。困ったもんだわね、まどかちゃんには大久保クンが……ね」


「そんなんじゃないよ……」



 わたしは、写真のいきさつを話した。自然にというか、当然乃木坂さんの話しにもなっていく。はるかちゃんのことだから笑ったりはしないだろうけど信じてもらえるか少し心配だった。



「そうか……そういうことって、あるのよね……」


 案外、わがことのようにシンミリしてくれた。


「で、これが、その写真なんだけどね……」


 カメラの前に写真を広げて見せた。



「……あ、マサカドさん!?」



「え……はるかちゃん知ってんの?」


 はるかちゃんは、迷っていた……そして、ためらいながらマサカドさんについて涙を堪えながら話してくれた。


 長い話だったけど時間なんか気にならなかった。わたしの中で、乃木坂さんと、写真の三水偏の女学生、そしてマサカドさんのことが一つになった。




 念のため、パソコンの電源まで落としてから仰向けにひっくり返る。


 たまに動画配信して、スイッチ切り忘れてあられもない姿を世界中に晒してしまうバカが居る。ことここに及んで、そういうドジは晒したくないからね。


 体のあちこちが音を上げている。支社長代理は両手を上げて喜んでいたけどね。

 

 ビデオチャットって、鎖骨から上の大首絵になりがちでしょ。事実、たった今までのわたしがそうだった。ベッドの上から撮ってたから、寝室のあれこれ写り込むのいやだったしね。


 でも、支社長代理のは、体の動きに合わせてカメラのアングルやフォーカスが変わるってしろもの。

 AIだかプログラムなのか、そういう仕掛けになっていて、まるでテレビの放送みたいにオシャレで自然なカメラワーク。なんだけど写り込んじゃいけないところは設定してある。テレワークに意を用いた前支社長の置き土産であるそうな。


 西田さんと峰岸君のサポートもあってボロを出さずに済んだけど、体験入隊はきつかった。


 並みの自衛隊員には負けないだけのスキルと体力はあるつもりだった。まして高校生になんか負けやしない。事実どっちにも負けなかった。


 でもね、わたしって、横でゴチャゴチャ言われるのは嫌いなんだ。だから、要求される五割り増しぐらいでサッサとやってしまう。体験入隊のメニューぐらいは朝めし前。なんと言っても、この手の事は西田曹長に習ってたしね。それに、体験入隊は、たったの二泊三日だしね。見栄もあったし、ちょっと頑張り過ぎ。で、このありさま。


 妹のサキは、こういうのは嫌いだった。サキは、みんなで仲良くおままごと的な子で、じっさい人を楽しませ、自分も楽しむことが天才的に上手だった。


 サキは、そのノリで仕事に成功し、そして失敗した。


「足して二で割ったぐらいがいいんだろうねぇ」


 TAKEYONAでは、相変わらず微温的なことを言う奴だと思ったけどね。この体験入隊に行って、サキの言うことも一理あると思ったよ。

 我の強いわたしは自分でやってみるまで分からなかった。テレワークだとか協調性だけの支社長もダメなんだろうけどさ。


 で、家に帰ると、このありさま(-_-;)。


 さて、めちゃくちゃ気は進まないけど、あいつに電話しなくっちゃ。


 転んでもただでは起きない、上から読んでもキサキサキ下から読んでもキサキサキ。


 お互い、やってみて、自分で結果を出すまでは納得しない。


 不器用で胸糞の悪い姉妹だ。



☆ 主な登場人物


仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部

坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ

芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部

芹沢 紀香       潤香の姉

貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問

貴崎 サキ       貴崎マリの妹

大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達

武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生

南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生

山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長

峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長

高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩

柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問

乃木坂さん       談話室の幽霊

まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母

 

 


 

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