96:『昼から学校に行った』
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語
96『昼から学校に行った』
薮先生に話すと元気が出て、昼から学校に行った。
生活指導室で入室許可書をもらうと、市民派の先生に嫌みを言われた。
「自衛隊の体験入隊なんかに行くからだ……な、なんだよ(; ゜゜)」
わたしは、恐い顔で先生を睨みつけていることに気がついた。
教室に行くと、さんざ冷やかされた。
インフルエンザを除いて無遅刻無欠席のわたしが欠席の連絡。それが、午後から元気に登校したものだから、恋煩いが一転オトコの心をゲットしたとか、親が危篤だったのが一転良くなったとか、自衛隊で食べ過ぎてお腹痛になったのが出すモノ出したら元気になった(これは夏鈴がたてたウワサ)とかね。
「まどか、今日から道具作りやるよ!」
里沙が、鼻を膨らませて言った。
「え……『I WANT YOU』に道具なんか無いでしょ?」
「予算よ、予算。来月中に執行しないと生徒会に没収されんの。だからさ、まだ公演まで余裕のあるうちに、平台とか箱馬とか作っちゃおうと思ったわけ」
「むろん、稽古もやるわよ。その前にテンション上げるのにいいと思ったのよ( •̀∀•́ )!」
腹痛デマ宣伝の犯人が息巻く。
「自衛隊の五千メートル走とか壕掘りとか、今思うと、けっこう敢闘精神湧いてくんのよね。で、どうせやるなら将来の役にも立って、予算の消化にもなる道具作りが一番と思ったわけ!」
放課後、里沙も夏鈴も掃除当番なんで、わたしは一足先に稽古場の談話室に行った。
「やあ、今日は早いんだね。まどか君一人?」
バルコニー脇の椅子に座った乃木坂さんは、もう幽霊って感じがしない。
「あの二人は掃除当番。そろう前に見てもらいたいものがあるの」
わたしは例の写真を見せた。乃木坂さんは面白そうに表紙と和紙の薄紙をめくった。
乃木坂さんの顔が一瞬赤くなったような気がした……でも。
「……僕と同じ時代の子だね」
「ひょっとして……!?」
「……別人だよ。この子も可愛い子だけど、世の中いろんな可愛さがあるんだね。当たり前だけど」
「……そうだよね。あの爆撃じゃ十万人も亡くなったんだもんね。ごめん、変なの見せて」
「ううん、いいよ。同じ時代の子だもの、知らない子でも懐かしい……あ、里沙君と夏鈴君が来る」
「なにやってんのよ(*’へ’*)、道具つくるんだから材木運び。もう材木屋さんのトラック来てるからさ!」
ドアを開けるなり、夏鈴が眉毛をつりあげた。
「さっき、言ったとこ……」
里沙がフリーズした。夏鈴も視線が、わたしから外れている。
「その人……」「だれなのよ……」
里沙と夏鈴に乃木坂さんが初めて見えた瞬間だった……。
☆ 主な登場人物
仲 まどか 乃木坂学院高校一年生 演劇部
坂東はるか 真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
芹沢 潤香 乃木坂学院高校三年生 演劇部
芹沢 紀香 潤香の姉
貴崎 マリ 乃木坂学院高校 演劇部顧問
貴崎 サキ 貴崎マリの妹
大久保忠知 青山学園一年生 まどかの男友達
武藤 里沙 乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
南 夏鈴 乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
山崎先輩 乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
峰岸先輩 乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
高橋 誠司 城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
柚木先生 乃木坂学院高校 演劇部副顧問
乃木坂さん 談話室の幽霊
まどかの家族 父 母(恭子) 兄 祖父 祖母




