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まどか 乃木坂学院高校演劇部物語  作者: 大橋 むつお
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89:『教官ドノの企み』

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語


89『教官ドノの企み』         




 夕食は、うな重定食をいただいて(おいしかった!)入浴。


 入浴中の描写はカット。だって、クリスマスの入浴じゃひと悶着あったしね(46『雪の三丁目』)


 ただ、「マリちゃん」の板に付いた女子高生らしさと、いっしょに入ってくれた大空さんのプロポーションがチョーイケテたとだけ申し上げておきます。


「大空助教、カラーガードのDVD見せてください」


 入浴後、里沙の一言で、DVDの鑑賞会になった。



「ワーーーーーガチイケテル、カッコイイ(≧∇≦)!」



 いつもながら、女子高生の感嘆詞は簡単であります。でも簡単な分だけ気持ちは伝わっているみたいで、大空助教は嬉しそう。で、後ろに座っていた男のみなさんも嬉しそう。


 ミニスカート、チアリ-ディングのミリタリー風のコスに、お揃いの旗を持って、『サンダーバード』と『軍艦マーチ』の曲にあわせて、器用に旗を操作しながら、いろんな風に行進。


 わたしたちは、見事に旗がヒラリするたびに――オオ!――


 男たちは、風にスカートがヒラリするたびに――オオ!――


「いやあ、いいものを見せてもらいましたが、ここの体験入隊はきついですなあ」


 企業グル-プの一人が、西田さんにグチった。


「あなたたちは、なんのための体験入隊なんですか?」


「来月、新入社員の研修でこれをやるので、下見ですわ」


「じゃあ、新入社員を連れて、もう一度来られるんですか」


「はい。もちますかねえ……」


「なあに、二度目はズンと楽になりますよ。もう靴を蹴散らされることもないでしょうし」


「あれには、たまげました」


「ま、カマシですよ、娑婆っ気抜くための。おたくの教官ドノは、いささか意地が悪そうですがね。まあ、要領覚えてしまえば難しくはないですよ」


 このヒソヒソ話は、わたしが聞き耳ずきんしてたから聞こえたんだけど、もう一人聞いてた人がいるた……その教官ドノがね。


「……西田曹長。なかなかのもんでしたね。障害走路といい、五千メートル走といい」


「おかげさまで、現役の頃を思い出して、楽しんでおりますよ」


「では、お楽しみついでに不寝番をやってみますか」


「おお、願ってもない。喜んで」


「では、女性は外すとして、男のみなさんで二人一組の四直制で」


「規範通りですな。では、組み合わせは、企業グル-プさんと相談しましょうか」


「いや、それには及びません。編成表を作っておきました。就寝前にご説明いたします。それまで、しばしの自由時間、お楽しみのほどを……」



 教官ドノは、振り向くと薄ら笑いを浮かべて行ってしまった。


 陰険なヤツ。障害走で負けたのを根に持ってるんだ。



 今日は建国記念の二月十一日、朝の天気予報では、関東平野には寒気団が居座って、夜半から大雪警報が出ている。窓から外を見ると、音もなく雪が降り始めている。


 西田さんは、元気そうだけど、もう七十歳をいくつか超えている。大丈夫だろうか。


 当の御本人は、企業グル-プのオニイサン相手にレンジャー訓練を受けたときの話しなんかしている。これで、障害走のときの「レンジャー!」ってかけ声の訳は分かった。


 でも、この不寝番で、とんでもない事件が起こることは誰にも予想がつかなかった。教官ドノも、西田さんも。そして幽霊の乃木坂さんでさえも……。



☆ 主な登場人物


仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部

坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ

芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部

芹沢 紀香       潤香の姉

貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問

貴崎 サキ       貴崎マリの妹

大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達

武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生

南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生

山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長

峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長

高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩

柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問

乃木坂さん       談話室の幽霊

まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母

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