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まどか 乃木坂学院高校演劇部物語  作者: 大橋 むつお
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87:『我らが助教大空真央』 

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語


87『我らが助教大空真央』         




 突き当たりの部屋は、稽古場にしている談話室ぐらいの大きさがあって、なんだか健康診断の時のように机と椅子が並んでいた……実際、血圧と問診の健康診断。それから、制服が配られた。大空さんは一瞬でわたし達の体格を見極め、ピッタリのを渡してくれた。


「では、これから誓約書に署名捺印をしてもらいます。未成年の人は保護者の承諾書を提出してください」


 中隊長さんが言った……え……マリ先生が承諾書を出してる!


 夏鈴が吹きだしかけて、中隊長さんに睨まれた。


「では、それぞれの部屋に戻って、着替え。十五分後に先ほどの営庭に集合。かかれ!」


 で、着替えて入り口のところに行くと。わたし達のはあったけど、企業グループさん達の靴が一つもない。一瞬先を越されたかと思ったら、少し遅れてやってきた企業グル-プさんが慌てていた。


「おれ達の靴がない!」


 さっさと外へ出たわたし達は笑っちゃった。企業グループさん達の靴がみんな外に放り出されていた。一瞬乃木坂さんのイタズラかと思ったら、乃木坂さん、笑ってチガウチガウをしている。


「最初のハッタリ。ちゃんと脱いでいないやつをああしておいて娑婆っ気を抜く」


 そう言った西田さんの服装は、前のまま。


「助教のやつがサイズを間違えやがった。どうせ、体験者用の六五式。同じやつだからね、これで助教に貸し一つ」


「あの、マリ先生、承諾書出してましたけど……」


「ここじゃ、十七歳ってことになってんだ、君たちもそのつもりでね。それから歩きながら喋れるのは、この先の営庭までだからね」


 西田さんは、ウィンクすると、駆け足で行っちゃった。


 営庭に出ると、西田さんが中隊長さんと話しをしていた。敬礼を交わして別れたけど、ここから見ると西田さんのほうが偉く見えてしまう。



「西田さんのトラックが珍しいんで、夕方まで見せて欲しいんだって。で、西田さんが、分解しないことを条件に承諾したとこ」


 乃木坂さんが教えてくれた。西田さんが得意そうに鼻の下をこすった。


「やだー、マリのこの靴マメができそう」


 後ろで、マリ先生がブリッコをしておりました……(^_^;)。


 それから、基本動作の訓練に入った。


 基本動作って、ほんと基本。気をつけ! 休め! 右向け右! 左向け左! 敬礼!



 敬礼ってば、こんなことがあった。



「教官。貴官の敬礼は二度浅いように思われる。正対して親指が見えてはいかんと礼式にあったと思うのですが。それとも昭和三十九年に定められた自衛隊礼式に変更でもありましたかな……いや、除隊して三十余年、この世界にも疎くなりましたからな」


 と、西田のおじさんは……またもカマシました。

 

 それから、行進の練習。自衛隊では歩くとき、必ず一列。左足から出て、手はグーにして、真っ直ぐに伸ばして肩の高さまで上げる。


 かけ声は、一、二、一、二、ソーレッ! でね、一は「オッチ」って発音する。


「前に進め! オッチ、ニ、オッチ、ニ!」


 でもね、我らが助教大空真央さんのは、こう聞こえる。


「エッチネ、エッチネ!」


 思わず笑いそうになったけど、こういう場合でも自衛隊は笑ってはいけないのであります……はい。


 それから行進練習と駆け足練習をやって、昼休み。


 カツ丼におみそ汁。カツ丼は普通のお店の特盛りにワラジみたいなトンカツ。


 食事は、大きな食堂に分隊ごとに集まる。うちは大空助教が話しの中心になった。


「こんな言い方、なんですけど、大空さんはなんで自衛隊に志願したんですか?」


「そうですよ、こんなにカワイイのに」


 里沙と夏鈴が遠慮の無い質問をした……他の女性隊員がいたら怒られそうだ(汗)


「わたしの家は、おじいちゃんの代から自衛隊だったから、自然にね」


 特盛りのカツ丼をペロリと平らげて、大空さんが答えた。



「大空さん。あんた、ひょっとしてカラーガードじゃないかい?」


「あ、はい。分かりました……?」


「うん。動きがキビキビしているだけじゃなくて、イカシテおる。あれは儀仗隊かカラーガードだど思った」


「さすが、大先輩。二年前からカラーガードをやってます。よかったら今夜記録のDVDお見せしましょうか」


 カラーガードって……?


「ぜひ、お願いします。われわれが現役だったころは、まだ無かったもんでね。一度見たいと思っておりました」


「西田さんは、どうして、除隊されたんですか。自己紹介の時、八年の勤務で曹長までなられたと伺いましたが?」


「いや……演習中に、米軍機を撃墜してしまいましてね」


「「「「え……(;゜Д゜)!?」」」」



☆ 主な登場人物


仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部

坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ

芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部

芹沢 紀香       潤香の姉

貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問

貴崎 サキ       貴崎マリの妹

大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達

武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生

南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生

山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長

峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長

高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩

柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問

乃木坂さん       談話室の幽霊

まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母

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