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まどか 乃木坂学院高校演劇部物語  作者: 大橋 むつお
71/106

71:『二人だけの誕生会』

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語


71『二人だけの誕生会』




「え、マリちゃん、本気かよ……」



 聞こえたのは、この一言だけ。


 さすがの高橋誠司も声を落とした。


「あれ、貴崎先生だよな?」


「うん……」


「横に居るのは?」


「悪魔だよ」


「え、あ!?」


「シ……」


 よほど真剣な話なんだ、ほとんど会話としては聞こえてこない。断片的な単語……あとは口の形でも分かる言葉だけ。


先生: 辞める……教師……人生……才能……あるし……


高橋: 分かった……待って……


 なんだか、先生、辞める気になって、高橋さんが止めてるっぽい。

 

 噂では、二乃丸高校で厳しいクラブ指導をしていると聞いていた。


 嬉しさ半分、寂しさ半分というところだった……二の丸辞めるのかなあ……いや、もっとスゴイ決心……真剣に話してるんだけど、湿っぽさが全然なくて、先生の目は潤香先輩みたくキラキラしてて……


高橋: じゃ……


 高橋誠司が身を乗り出して、二人の顔がニ十センチくらいに近づいた。


先生: 本気?


 先生と高橋誠司の顔が見たことないくらい真剣になった。


 

 (*;゜;艸;゜;)ブフッ!! 


 

 先生、耐え切れずに噴き出した。ガシガシ頭を掻いて、いっしょに笑う高橋誠司。


 振り返ると、二人と同じくらいの近さに忠クンの顔。


「大人の会話……」


「ちょ、近い」


「あ、ごめん」


 いわゆる大人の会話なんだ。


 スゴイ決心があって、でも最後ははぐらかすかオチャラケにして重くならないようにしたんだ。


「プロポーズして断られた?」


「下衆の勘ぐり!」


 その時、お店のドアベルがカランと鳴って、女の人が入ってきた。


 ええ?


 女の人は、カウンターの二人に笑顔を向けて、コートとニット帽をとった。


 高橋誠司を挟んで座った、その顔は先生にソックリだった!


 


 アハハハハハハ(≧∇≦)


 はるかちゃんはモニターの中で、ポテチの袋を抱えながら大笑いした。



「そんなに笑わないでよね。こっちはタマゲテ、ため息つくしかなかったんだからね」


『貴崎先生に妹さんがいたんだ』


「うん、『よう、サキちゃん、お姉ちゃんに似てきたな』て高橋誠司が手を挙げるとね『お姉ちゃんがわたしに似てきたの』って。ニューヨークに行ってたのが、最近帰ってきたっぽい」


『あとの話は聞こえなかったんでしょ?』


「三人で出ていっちゃったしね」


『で、忠クン一人が感動したんだ』


「うん、トレンディーとか、大人の決意だとか、興奮してた」


『大人って、ドラマみたいに喜怒哀楽現さないからね。人に相談するときは結論持ってる。はたから見たらはぐらかされたり、オチャラケて見えることがあるけど、そんなもんだと思うよ。大事な決心だって見抜けたまどかは偉いと思うよ。わたしは分からなかったから』


「でもね、忠クンの感動は違うと思う」


『単純なんだよ……感動して見せることでまどかの気持ち……掴もうとしてるんだ』


「ええ! わたしは戸惑ってるだけなんだよ。先頭飛んでるのがあさっての方角に行っちゃって、ウロウロ飛んでる渡り鳥みたいなもんだよ」


『カーカー』


「カラスは渡り鳥じゃないよ」


『アハハ、そだね……』


「はるかちゃん、ポテチおいしそうに食べるわね(……)のとこ、全部ポテチ食べてる間なんだもんね」


『こんど、ポテチのコマーシャルに出るの。なんだかズルズルって感じだけど。ロケは東京、それで引き受けちゃった。自費じゃしょっちゅう行くってわけにもいかないし。日程とか分かったら教えるわね……わたしの知らないところで話しが進んでくみたいだけど、プロデューサーの白羽さんはいい人だし、マッイイカぐらいのノリでね。立ち止まっても何も進まないしね』


「たいへんだね、はるかちゃんも激変で……ところで例のお願いは?」


『あ、ごめん、ごめん。そっちのビッグニュースで忘れるとこだった。これが今夜のHARUKA放送局の一押しニュース。ジャジャーン!』


 はるかちゃんが、USBメモリーを見せた。


『この中に、作品入ってるからね。今から送りまーす。題して『I WANT YOU!』とにかく……ま、読んでみて!』


 覚えてる? 元日のビデオチャットで、はるかちゃんにお願いしたこと。


 女子三人、照明や道具に凝らない芝居。はるかちゃんが演った『すみれの花さくころ』を紹介してくれたんだけど、わたしたちタヨリナ三人組。少しは力も付いてきて。もうタヨリナなんて呼ばせない!


 でも。歌がね……六曲も入ってるんで、涙を呑んで却下。


 で、わたしたちにもできる、そんな都合のいい芝居を頼んじゃった。


 はるかちゃんとこのコーチの先生が言ってくれたそう。


『そんな演劇部こそ、救済の手をさしのべならあかん!』


 そんな……って言葉に少しひっかかたけど、よろしく頼んじゃった。



☆ 主な登場人物


仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部

坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ

芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部

芹沢 紀香       潤香の姉

貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問

貴崎 サキ       貴崎マリの妹

大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達

武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生

南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生

山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長

峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長

高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩

柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問

まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母

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