↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語  作者: 大橋 むつお
62/106

62:『凧の行方』

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語


62『凧の行方』




 振り返ると、右のホッペにグニっと指がめり込む。


 ガキンチョがよくやるあれ。


 で、この幼児的ご挨拶は……薮先生。


「もう、先生ったら子どもっぽいことを」


「俺は、小児科の医者なんでな」


「わたし、今月で十六です」


「俺の所見じゃ、四捨五入して、まだ小児科の対象だ。ほら、あいつみたいにな……」


 先生の指の方角には、今まさに鳥居をくぐって境内を出て行く忠クンの背中が見えた。


「忠クン来てたんだ」


「たった今までいっしょだった。なんせ、この人混みだ。まどかに気づいたのもたった今」


「メールしてくれたら、いっしょに来たのに」


 自分のことを棚に上げてぼやいた。


「あいつ、ひどく思い詰めっちまってなぁ」


「え、それって……」


「あいつ、あの日から、家に通い詰めでよ。毎日親父の話さ」


「え……」



 先生は、ため息一ついて空を見上げた。



 彼方の空に凧が舞っている。


 多分隅田川……ひょっとしたら荒川の河川敷かも。いずれにしても、ここから見えるんだ。   


 かなり大きな凧……それもかなりの高み。



「俺も、三日目からは閉口しちまってな。雰囲気に弱いってのは俺が言ったことだけどよ、ちと度が過ぎる。まどかの演劇部で自衛隊の出てくる芝居やったんだって?」


「あ、ええ。去年のコンクールで、落っこちゃいましたけど」


「あれで、主役の代役やったんだってな。あいつには衝撃だったみてえだよ」


「あれは、わたしの無鉄砲で……落っこっちゃいましたし」


「しかし、立派なもだったって、審査員の先生もべた誉めだったんだろう」


「さあ……よく覚えていません」


 あれは、今では、わたしのカテゴリーの中では『やりすぎ』の中に入っていて、あまり思い出したくない。


「その話しの中で、自衛隊の少年工科学校が出てくるんだって?」


「はい、もう一人の主役の男の子が、それで自衛隊に入ろうと思っちゃうんです」


「で、やっこさん、その主役になっちまった」


「え……?」


 ナサバサバサ!


 たむろしていた鳩たちが、なにに驚いたのか予感したのか、慌てて飛び立っていった。


「忠のやつ、その少年工科学校に入りたいって言い出しちゃってよ。もっともあれは平成二十二年に改編されちまって、高等少年工科学校って言うんだけどよ。本書いた先生のちょっとした認識不足なんだろうけど、芝居ってのは恐ろしいもんだ。その認識不足や反戦なんてカビの生えたテーマでも、反面教師になっちまって。やっこさんの頭に残っちまった」


 風向きが変わってきたのか、凧が大きく揺れている。


「あいつは、良い物をもってるよ。気長に良い風が吹いてくるのを待ってりゃ……ありゃりゃ……」


 凧の糸が切れちゃったんだろう。凧はクルクル回りながらあさっての方角に飛んでいってしまった。


 二人で口を開けて、それを見ていたら、やがて、その風がここまで吹いてきた。


 わたしはジーパンだったけど、前を歩いていたオネエサンのスカートが派手にひらめいた。


 すかさず薮先生はそれをご鑑賞になられました(^_^;)。


 日本のクタバリゾコナ……お年寄りはお元気なもんだ。


 その、クタバリゾ……お年寄りたちは、これからのわたしたちに少なからずの影響をもたらすことになる。


 風が止むと、ポカポカとした陽よりになってきた。


 まるで気まぐれなわたしたちの心のように。波瀾万丈な一年を予感させるように。



 とりあえず、元日は、四捨五入して、目出度く迎えることができました。



☆ 主な登場人物


仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部

坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ

芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部

芹沢 紀香       潤香の姉

貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問

大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達

武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生

南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生

山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長

峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長

高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩

柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問

まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。