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まどか 乃木坂学院高校演劇部物語  作者: 大橋 むつお
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6『抹茶入りワラビ餅』

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語


6『抹茶入りワラビ餅』




 わが乃木坂学院高校演劇部は、先代の山阪先生のころから顧問の創作脚本を演ることが恒例になっていた。「静かな演劇」と「叫びの演劇」の差はあったけど、根本のところでは同じように感じる。


 どこって、上手く言えないけど……集団として迫力があるところとか、青春ってか、等身大の高校生の姿を描くとこ(毎年、審査員が、そう誉めているらしい)、なんとなく造反有理なとこ(この四文字熟語は、入学してからマリ先生に教えてもらった)……そして、毎年地区発表会(予選)で優勝し、中央発表会(本選)でも五割を超える確率で優勝。この十年で全国大会に三度も出場して、内二回は最優秀。


 つまり日本一(*´ω`*)!


 この作品のアイデアは、夏休みも押し詰まったころ、創作に行き詰まって湘南の海沿い、愛車のナナハンのバイクをかっ飛ばし、江ノ電を「鎌倉高校前」の手前で三十キロオーバーで追い越したとき、急に「抹茶入りワラビ餅」が食べたくなった先生。そう言えば江ノ電の電車って、抹茶を振りかけたワラビ餅に似ていなくもない。


 で、そのまんま鎌倉に突入したマリ先生は、甘いもの屋さんに直行。


 で、出てきた「抹茶入りワラビ餅」を見て、ハっと思いついたわけ。


 なにを思いついたかというと、お皿の上に乗っかった「抹茶入りワラビ餅」が、わたしたちコロスに見えた。


 で、コロス…コロス……そうだ「コロス」の反意語は「イカス」だ!


 で、あとは、そのヒラメキを与えてくれた「抹茶入りワラビ餅」を無慈悲にもパクつきながら、携帯で必要な情報を検索。その日の内にアラアラのプロット(あらすじ)がまとめられ、今日のリハーサルに至っているというわけなのよ。


 この話を聞いたとき、部員一同は「アハハ」と笑いながら、今さらながら、マリ先生を天才と思った。集団の迫力、等身大の高校生、反体制というセオリーが見事に一つになっている!


 ただ、家でこの話をしたとき、クタバリぞこないのおじいちゃん(わたしじゃなくて、おばあちゃんが正面切って、お母さんは陰でこそこそ言っている)が、こう言った。


「イカスってのは、もともと軍隊の隠語(業界用語)なんだぜ……」 


 ま、昭和ヒトケタのおじいちゃんのチェックはシカトして、本題に……。


 場当たりをきっかり二十分で終えたあと、今度は十七分きっかりでバラシを終えて、中ホリ裏の道具置き場に道具を収めた。


「五十四分三十秒です」


 山埼先輩が報告。


「じゃ、残りの五分三十秒は次の学校さんが使ってくださいな。オホホホ……」


 余裕のマリ先生。


 しかし、中ホリ裏の道具置き場は半分がとこ、わたしたち乃木坂の道具で埋まっていた。


 それが、いささか他の学校のヒンシュクをかっていたことなど、その時は気づきもしなかった。


 立て込みやバラシも他校の実行委員の手を借りることはなかった。それが誇りでもあったし、ほかの学校や、実行委員の人たちにも喜ばれていると思っていた。


 そう、あの事件がおこるまでは……というか「あの事故」は終わったわけではなかったのよ。



☆ 主な登場人物


仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部

芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部

貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問

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