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まどか 乃木坂学院高校演劇部物語  作者: 大橋 むつお
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2『序章 事故・2』

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語


2『序章 事故・2』




 一段落ついたので、状況を説明しとくわね。


 わたし、仲まどか。


 荒川区の南千住にある鉄工所の娘です。


 中三の時に……って、去年のことだけど、近所のはるかちゃん、はるかちゃんは一歳年上なんだけど、幼なじみなのではるかちゃん。


 そのはるかちゃんが入ったのが乃木坂学院高校。


 去年、その学園祭によばれて演劇部のお芝居を観てマックス大感激! 


「わたしも、この学校に来よう!」と、半分思ったわけ。半分てのは、下町の町工場の娘としてはちょっと敷居が高い……経済的にもブランド的にもね。


 演劇部は、とにかくスゴイ!


 ドッカーンと、ロックがかかったかと思うと、舞台だけじゃなくて、観客席からも役者が湧いてきた! 中には、観客席の上からロープで降りてくる役者もいて、「怖え~!」と思ったけど、思う間もあらばこそ。集団で、なんか叫びながらキラビヤかな照明に照らし出され、お台場か横アリのライブみたい。ゴ-ジャスな道具に囲まれた舞台で舞い踊って、そこからは夢の中……お芝居は、なんか「レジスト!」って言葉が散りばめられていて、なんともカッコヨク「胸張ってます!」って感じですばらしかった。「レジスト」って言葉には、コンビニのレジしか連想できなかったけど、あとで兄貴に聞いたら「抵抗」って意味だって分かった。


 この時主役を張っていたのが潤香先輩。もう、そのときから「オネーサマ」って感じ。


 で、この時、はるかちゃんは中庭の『乃木坂フードコート』で三角巾にエプロン姿で人形焼きを、かいがいしく焼いていた。


 演劇部のお芝居のコーフンのまんま、中庭に行って、はるかちゃんから売れ残りの人形焼きをもらい、はるかちゃんのご両親といっしょに写真の撮りっこ。


 今思えば、はるかちゃんちの平和は、この頃が最後。今思えば……て、同じ言葉を重ねるのは、わたしに文才がないから……と、わたしの落胆ぶりを現しております。


「明るさは、滅びのシルシであろうか……」


 中三のわたしには分からない言葉を呟きながら、はるかちゃんは三角巾を外した……。


 その時!


――ただ今より、乃木祭お開きのメインイベント。ミス乃木坂の発表を行います。ご来場の皆様はピロティーに……――と、校内放送。


 模擬店が賑わっていたのとMCがヘボなのとスピーカーがハウってたので二位三位は聞き逃しちゃった。


 でもって一位の発表、その一位がなんと……。


―― ジャジャジャーン! 三年A組、芹沢潤香さん! ―― 


 そう、さっき見たばっかしの潤香先輩!


 ピロティー中から「ウォー!」とどよめき。潤香先輩はいつの間にか、かつて在りし頃の『東京女子校制服図鑑』のベストテン常連の清楚な制服に着替えて、野外ステージに登りつつあった。


 そして、タマゲタのは……。


――えーと、二位、二位、準ミス乃木坂の……ゴシロ、え、ちがうの? ゴヨ? イツシロ? え、ゴダイ? 了解、 アハハ、失礼しました(^_^;) 五代さん、一年B組の五代はるかさん! えと……五代さん、ステージに上がってください!


 一瞬ピロティーが静まった……。


「え……」


 本人が一番分かっていなかった。


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